間章 宴の終わりに。
エルフの長老達の願いにより、エルフの森は空中要塞の管理下に置かれる事になった。
エルフ達は森にベドラムの彫像を建てようとしたが、ベドラムは首を横に振った。創るならせめて、自らを生んだドラゴンの母の彫像が欲しいと。
「これで人間界と魔界にいる五名の魔王の一角、自由の魔王リベルタスを討った。海域でジュスティスが死亡した事を証明出来れば、魔王は二人死んだ事になる」
ベドラムとロゼッタは、二人、空中庭園から大地を眺めていた。
次元橋にて、人間界と魔界の両方が見える場所だ。
「悪夢の女王にして、深海の魔王サンテとは今の処、私と友好関係にある。ヒルフェはどうだろうな。奴は裏社会の要人達に付き、邪悪な人間側のマフィア達との繋がりが根深い…………」
「でも、世界全体を考えれば、良くなりつつあるのよね?」
王女は不安な顔になる。
「そうかもな…………。私は世界を征服すると決めた。それは人間と魔族、あらゆる種族の共存だ。可能だろうか」
「貴方なら、出来るかもしれない。私は王都ジャベリン、故郷を守れればそれで良かっただけだけど…………」
空中要塞では、人間、吸血鬼、エルフ、ミノタウロス、リザードマン、ドラゴン、他、あらゆる魔族達が交流を行っている。
「正直。フリースの行動と目的が分からない。イリシュから聞いたんだが……。あいつは、エルフの森にある洞窟で何かを手に入れた筈だ。話をはぐらかされた」
「それは横に置いて……。彼女は味方だから、今は味方を信じよう?」
ベドラムは考える。
これから新しい時代へと向かっていくのだろうか。
だが問題は山積みとなっている。
「魔族側はいい。人間側の脅威と戦う必要がある。悪名高き人体実験場『魔法学院・ローズ・ガーデン』。かつて魔王ジュスティスが力を発掘し、魔王サンテを生み出した場所…………。フリースがその詳細を調べている事を私は知っている……」
「魔界側もでしょう? 無の領域と呼ばれる地域の脅威は計り知れない…………。太古の昔に大魔王と呼ばれる者の死骸が眠っている場所なんでしょう?」
ロゼッタは魔族達の伝説を知っている。
いつか古の魔王が蘇り、再び、人間達の脅威になるという伝承を……。
「魔導実験と核兵器実験を繰り返し、挙句、多数の国々が核戦争で消滅した無人の荒野。毒の物質が溢れ出す『崩壊炉の荒野』。人間界の最果てにあると聞いている。核実験を行い尽くした結果、放射性物質が溢れ出し、アンデッドさえ近寄れない場所になっていると」
「問題は山積みね」
「そうだな」
世界は平和にならない。
それでも、ただ、確かにこの空に浮かぶ城には、様々な人間と魔族、種族、モンスター達の絆があった。




