幕田卓馬風少女漫画キャンプ小説『キャンプ☆Days 〜 三角形の下を跳ぶ繭蛾 〜』
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幕田卓馬さまからは楽しげに許可をいただいております。
ドブ川から漂うううんざりするような臭気は、それを見下ろしながら煙草の煙をくゆらせる中年男性との相互作用で、満月をさえ鈍色に曇らせせせているようだった。
そのすべてを綺麗に払拭し、世界を明るく照らし出すような存在、それが女子高生である。
「ねえ、くふうこ。今度キャンプに連れて行ってよ」
親友のあげはにせがまれ、牧区上昆子は読んでいたキャンプもののの少女漫画から顔を上げ、いつものように幸福そうに微笑んだ。漫画本のページの上をセイヨウシミが這って行った。彼女がそれに気づいていたら、虫嫌いなので悲鳴をあげていたかもしれない。
彼女は『幸福少女』と呼ばれている。
いつも幸福そうに微笑みを浮かべているにとどまらず、ほんとうに不幸が彼女の周りには降って来ない。セイヨウシミのように実は降っていたとしても、ちょうどそれに気づかない。まるでガンダムに守られているように、あらゆる不幸は彼女を避けて後ろへ回り込み、誰もいない深夜のコンビニの駐車場を宇宙ステーションのような静けさで駆け抜け、愛読する漫画を学校に持って行ったら想いを寄せる後輩もそれを愛読していて、何が言いたいのかよくわからなくなったが、うまりは『幸福』を並べ替えて『くふうこ』と呼ばれていた。
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飛行機雲が薄青色の空に道を描いて行く。
その下に広がる河原のキャンプ場では、赤るい女子高生太刀のキャッキャという賑やかな声が響いていた。
しいなの知識にない、なんとかという種類のテントを設置し、中では3人の仲良し女子高生太刀魚がじゃれ合っている。三角形の天井からはなぜかガンダムが吊るされ、かわいい繭蛾がパタパタと跳んでいた。(タイトル回収)
そんな同級生をキャンプに連れて来たくふうこは1人、賑やかさから離れ、河原に座り静かに流れる川面を眺めていた。隣に座る青白い顔をした少女に話しかける。
「キャンプって気持ちいいよね。日常をひと時離れて、非日常を一滴垂らしたみたいで」
「え。あんた1人で河原に座ってるって書いてなかったっけ?」
「1人だよ? だってあんた、幽霊じゃん」
「バレてた?」
「なんでここにいるの? 地縛霊? 恋人に川に突き落とされて殺されたとか?」
「それ『パ◯プキンムーン狂騒曲』の人魚じゃねーか。あれはもうエタったんだよ」
「エタってないよ! いつか必ず、作者が満足する形で復活するんだから!」
くふうこのポジティブ・シンキングが幽霊を揺らした。幽霊の揺れ方は陽炎のように、揮発するガソリンの表面のように、物干し竿に吊るされた一反木綿のよつに、うまりは心を動かし、揺れたのだった。
「あ、揺れた。よく見るとあんた、透明なんだね。背景が透けてる。透明にも色があるんだね」
「なんだかよくわからんけど、あんた幸福そうで羨ましいわ。なんにも悩みとかなさそう」
川面を煌めかせていた陽の光が、翳った。
川面の水がくふうこの心で揺れた。
「私だって幸福に包まれてるわけじゃないよ。微笑みが幸福を呼び寄せるだけ」
くふうこは幸福なんてのは降り積もる雪のようなものだと思っている。
際限なく連続するように見えて、きっと不幸に落ちるのは一瞬だ。
だからいつ不幸になっても笑っていられるように、いつも微笑みを絶ちやさない。
一番いいこと言っているような、一番いいところで誤字をかます。人生とはそういうものだと思っていた。
キャンプを楽しむ同級生たちんぼの声が遠くなる。木立のあいだを駆ける野ウサギを目で追って、くふうこは時分の防爆とした未来屋に思いを派生る。漂って狂カレーの臭いにはヒ素かな暗鬱ノ匂いが混じっている。それでも彼女はとても幸福そうに、微笑だ。
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※ちなみに最近の幕田作品には誤字脱字がありません。




