最終話
空には雲一つない快晴。
穏やかな春、木々は目吹いて花は見事に咲き誇っています。
今日はハワードの、ダウニング侯爵就任式です。
私の産んだ可愛い息子も、もう世間的には働き盛の三十代後半となりました。
学園を卒業後にセレスティン様と結婚し、既に二人の子持ちとなっている。つまりは私も、すっかりおばあちゃんというわけよ。
残念ながらミッチェル様ご夫妻は、子宝には恵まれなかった。
比較的早い段階でのハワードの養子縁組の話だったので、小さい頃からハワードはミッチェル様の家に出入りしてかわいがってもらいました。
セレスティン様も将来はハワードと結婚してダウニング侯爵家の夫人となる事が決まっていたため、折々にダウニング公爵領に来られて、領の子どもたちとの交流を図っていたので、結婚後もスムーズにダウニング家に馴染みました。
ダグラスはミッチェル様とご一緒に引退、一線からは退いたものの、ハワードの次の世代の育成に力を入れております。
私はと言うと……
「お祖母様、これなんですけど……」と私に話しかけるのは孫のエリオット・マルセルです。
そう、私と同じく無魔力の記憶持ちの男子なのです。ダウニング家の特徴である、銀髪にシルバーグレイの瞳でイングリッド様を男の子にしたらこんな感じ?と言う凛々しさです。
私が産まれたこと事態がちょっとイレギュラーだったので、次のマイラは他の貴族家から産まれるだろうと思っていたのですが、孫にマルセルが現れるだなんて……
そのエリオットも、もう学園に通う年頃となりました。そろそろ婚約の話も、何件か来ているようです。おそらく今いらっしゃる二人の王女のどちらかに婿入りすることとなるでしょうけど。
眠り病の専門医としてトップを走っていたダネル医師は、後続に研究を託して引退。今はマイラとマルセルの産まれる条件に関して研究三昧の日々です。
先日、魔力腺から遺伝子情報を確認するという、超画期的な手法を発表しました。すごすぎない?
親子鑑定などにも適用できるので、王城の侍女情報によると密かに愛人など囲っておいでの方々がビクビクしておいでだそうです。
たまに平民で魔力の高いものが居ますが、魔力腺情報からどこそこの貴族の隠し子だなんてことも、分かってしまいますものね。
一応、マイラ/マルセルの出生が王家案件となっているのと、正確な親子鑑定は相続の為にも必要ということで、伯爵以上の高位貴族は魔力腺情報の登録が義務付けられました。
なんというか、実のところハワードの魔力腺にダウニング侯爵家とは微妙に違うものが混ざってるらしいんですよね。
ただ、ハワードはダグラスの子であることは確定してるし(当然だわ、失礼な!)シーラとハワードにも血縁関係は見られるということなのです。
ターラント子爵夫人が亡くなっているので、調べようもないのですが、もしかしたら何処かその辺でなにかがあったかも知れない、というのがダネル医師の結論でした。
超絶にデリケートな問題なので、この話はダネル医師と私とダグラスの三人の秘密なのですけどね(シーラは血液採取を、魔力腺研究のサンプル収集の為だと思っている)
眠り病で亡くなる人がいなくなったように、いつかマイラ/マルセルの産まれる規則性なんていうものも、そのうち判明するかも知れないわね。
で、エリオットなんだけど彼は、前世で大手ゼネコン関連の会社にいたらしくって、今はダウニング侯爵領内の道路建設に燃えています。
魔力の多い者たちを使って、トンネル工事に取り掛かろうとしてるみたい。とりあえずは領内の小さなトンネル工事から始めてもらってる。
これが完成すると今まで遠回りで不便だった田舎への動線が簡易になるので、みんな結構期待しているみたい。
魔力を使う人達が元々土木関連に魔力を使っていたこともあって、エリオットのやりたいトンネル工事なんかとは相性がいいらしい。
けれども山をぶち抜いて道を作るなんて、今まで考えも及びませんでした、ってエリオットの構想にみんな驚きつつも感心してるんだって。
私はトンネルなんて知ってても、構造とか安全性とかまでは責任を取れないものね。面倒くささが先に立つから、やろうとは思わなかったし。
私は今もマッサージ師たちの統括と指導をしつつ、王家のマイナスイオン発生機も時々やってます。
マルセルというのはどうもご自分のしたいことを優先させる傾向があるらしい。エリオットもご多分に漏れず、すっかり道路建設の方に夢中になってるんですよね。
なので、私が元気な内は王家の御用も務めさせていただいてます。
この世に生まれてやりたいことがあって、それを出来る環境にあるというのは大変ありがたいことですわね。私は生きるために必死で考え出したことでしたが……
他の人のように魔法を使えたら、と思ったことも一度ならずありましたが…… だって魔法少女なんて、ちょっとそそられません?
魔力なしに産まれて、周囲からは将来は野垂れ死にだなんて言われましたが、なんとか未来を切り拓いて生き残ったぞ!
ざまあみろ!
最後までお付き合い下さいまして、ありがとうございます。
来週あたりに、番外編というか閑話を順次投稿予定です。




