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不遇の姉は、未来を拓く  作者: きむらきむこ
乳母編

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 エドワード・コール・ターラント子爵 3

「『それはどういうことなのか?』と私は彼に説明をしてもらったよ」


「『つまりは魔力の代わりに過去の記憶を持って生まれてくる子が時折高位貴族の中にいるんだよ。その子をマイラ様かマルセル様と名付けて準王族として扱うのさ、そうすれば王家はマイラ様の不思議な体質のせいで眠り病を回避できる上に、何かと有難い恩恵があるんだよ』彼は侍従や侍女系の家では公然の秘密となっているので、他では言ってくれるなよと私に教えてくれたよ」


「過去に遡って調べてみれば、確かに上下水道の発展だとか清潔の徹底による病気の予防など、世に浸透にしたのが確かにマイラ様マルセル様のいらっしゃる時代だったよ」私は再度お茶で口を湿らせて語った。


「友人が言うには、先のマイラ様のお血筋に産まれたジェインは、僅かだけれど次のマイラ様かマルセル様を産む可能性があるので、ご実家からそう言ったことを聞かされているはずだ、ということだったよ」


「ジェインと結婚してアメリアが産まれて……ジェインから死産したことにすると聞かされたんだよ」


「え?そんな、でもアメリア様は……」シーラが声を上げるのも当然だったが、私はシーラを制して続けた。


「そう。死産なんかしていない、そこはもちろん争いにはなったがなんとかアメリアの存在を認めさせたんだ。ただ、ジェインは自分の血筋にも関わらずマイラ様の恩恵を知らなかったんだよ」


「お母様のご実家では、それをお母様に伝えなかった、ということですか?」


「どういった事情かは分からない、アメリアが産まれた頃にはもうジェインの父親は亡くなっていたから。ただ、わざと伝えていない、ということだけは明らかだったんだよ」


「それでアメリアを家で育てることだけは、なんとか私が認めさせたんだ。だけれども私がアメリアに構うとジェインが、アメリアにとんでもない仕打ちをするものだから、仕方なく距離をおいて育てることになったんだ」


「それが我が家で、お姉様がいないもの扱いを受けた理由ですか」シーラが、冷たい声で私に訊ねた。


「まあ、そうだね。これでも出来る限りはアメリアに不便の無いように、頑張ったんだけれどね。乳母や庭師だとかに便宜を図って……」


 私の力のない告白を聞きながら、どんどんと表情の消えいくシーラを見ていると、本当に自分の不甲斐なさが自覚されて辛い……


「シーラが産まれてからは、ジェインもお前の誕生を喜んでそっちに係きりになったものだから、アメリアのこともなんとかしてやりたかったのだけれど……」


「王家にはもちろん伝がなかったし、学園時代の友人にも派閥が違っていて声をかけられなかったんだ。なんとかエアルドレッド侯爵家に……とも考えたんだが、社交の度にジェインが侯爵に馴れ馴れしくするものだから、私自身も侯爵家から敬遠されてしまってね……」


「お父様って……」シーラの目が色々と物語ってはいるけれど、ここは気が付かないふりをしておこう……


「そんなわけで、学園に入ってからもアメリアに表立っての支援はできなかったが、なんとか生活面で苦労はしないように手を出していたんだ。それとジェインがエグバートに変な教育をつけないように見張っていたのと……で」


「で?」シーラが先を促す。


「申し訳ないが、シーラの教育を後回しにしてしまった。淑女教育が足りなくて、近衛を……となってしまったのは本当に済まないと思っているんだ」私はシーラに向かって頭を下げた。


 シーラは慌てたように首を振り、「アレは自分の努力が足りなかったからですわ。お母様がエグバートに掛かり切りですねてしまったこともありましたが、今になって考えてみればお母様のおそばで育たなくて良かったと思っています」


「そう言ってもらえると助かるよ。なんとかジェインから子どもたちを遠ざけるようにするので一杯一杯でね。子どもたちの思想がジェインに染まらないように、家庭教師とも連携を取っていてね……」遠い目をした私にシーラは、なにやら思いついたかのような顔をした。


「……お母様は浮気を心配しておいででしたわ」

「はあ?なにを……何を言ってるんだ」私は心底驚いて言った。


「わたくしもガヴァネスとお父様がこそこそ話しているのをよく見かけたので、ちょっと疑ってました」と言う娘に私は、ハッキリと否定した。


「情けないけれど、私はそこまで、キャパシティーが広くないんだよ。問題のある妻と事情のある娘と、母親に近づけたくない子どもたちを抱えて、外向きと家の仕事をこなすだけでも精一杯で、お前にも迷惑も不便もかけただろう?」


「ふふっ、頼りがいのある父親だと思いはしませんでしたが、精一杯やって下さったのだと今知りましたわ」シーラは目元を拭いながらも、笑って返事をした。


「とにかくアメリアの方は学園に入ってイングリッド様とお近づきになったと知って、本当に安心したんだ。卒業までに連絡を取ろうと試みていたんだが、ダウニング侯爵家から内々に縁切りするように連絡をもらった時は本当に助かったと思ったよ」


「内々に連絡を?」

「そうだよ、ジェインに知れるとコトだからね、結局のところ、ジェインはアメリアが準王族になったことを、知ってしまったわけだけれど」

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