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私がダグラスと結婚してから早三年が経とうとしている。
イングリッド様もマイロン第二王子と無事にご結婚されて、もうそろそろ身二つになられるところだ。
私はイングリッド様の身の回りでお世話をするメアリーのそばを、居心地悪くウロウロしている。
「アメリア、少しは落ち着きなさいな」イングリッド様がおっとりと笑いながら、私に話しかけてこられた。
「本当に、何故あなたの方がソワソワしているの?もうとっくに一児の母になっているというのに」メアリーが、意地悪く尖った声を出す。
そうなのです。私アメリア・マイラ・ダヴァナー伯爵夫人は、イングリッド様に先立つこと三ヶ月前に嫡男ハワード・キャシディ・ダヴァナーを授かったのです。
ダグラス様に良く似て、茶髪に緑の瞳も引き継いだ上に魔力量もかなり多めということで、そっと胸を撫で下ろしたのは記憶に新しいです。
まあ、魔力が無いなら無いで、ハワード・マルセルの名をいただいて準王族となり王家のどなたかと縁を結ぶ事になったでしょうけど……
さすがに次の無魔力者は、私の血筋からは出ないようですが、私の祖父もそう思って油断していた結果が「私」なので、備えは大事ですね。
この「私」という例外を鑑みて、王室のルールブックと言える王室規範にもマイラ、マルセルに関しての追跡調査は必須事項として盛り込まれたようです。
で、出産したばかりの私が何故この場にいるかとう言うと、私がイングリッド様のお子様の乳母になることが決まっているからです。
私の可愛いハワードも、乳兄弟としてともに育つべく王室にいらっしゃるイングリッド様の元に参じている、というわけです。
おそらく、これから十年程度の単身赴任(ハワードがいるので正確には単身ではないけど)を余儀なくされました。
領地にいる夫のことも気になるし、私主導で行っていた薬草栽培とポーション作りの事も気になります。
薬草栽培とポーション作成は、私の学園時代の同級生、クィンシーが意外にも適性を発揮して、私に変わって畑仕事から頑張ってくれているので、それほど心配はないのですが……
問題は、ミッチェル様とダグラスとの関係性かしら?ダグラスは包容力のある大人なので、ミッチェル様を立ててるんだけど、ミッチェル様ご本人がねぇ……
何かとダグラスにあたりが強いみたいで、少々領政に差し障りがでそうな感じなんですよね。
ミッチェル様の奥様のリプリー様の方は、お姫様育ちのせいか、結婚前のゴタゴタを笑って流して、鷹揚にすべてを受け入れておられるというのに、ほんっと大人げないよねえ。
結婚前のゴタゴタだって、元はと言えばミッチェル様とリプリー様の悪あがきが原因だし、お飾りとはいえ領主として周囲に敬われているんだから、そのまま受け取ればいいのに、ダグラスに無駄に反抗しちゃうもんだから、やりにくくって仕方ないのよね。
ま、私のダグラスは、ダウニング侯爵家の為なら、ちょっとばかり扱いにくい領主だって、なんとかしちゃうんだけどね。
ん?私のダグラス?まあなんていうか、結婚してそろそろ三年ほどになるんだけど、これがなんというかとっても幸せ……なのよねえ。
顔色伺わなくても穏やかに返事してくれる人と一緒に暮らすって、こんなに楽で息がしやすいなんて、ほんっとに最高。
学園の寮生活でメアリーと同室になったときも、それはそれで楽だったけど、ダグラスは夫なわけで、もう安心感が半端ないったらありゃしない。
おまけにダウニング侯爵家への忠誠心もスゴイから、準王族の名前マイラを戴いた私を絶対に裏切らない。これほどに安心のできる相手なんているかしら?いや、居ない。
ダグラス的には、ハワードも無魔力で産まれたら言うこと無かったんだろうけど、人と違った特性で生きるって結構面倒くさいから、魔力はあるに越したことないと思うのよ。
準王族としてマイラの名前をいただいたものだから、王室との繋がりを求められてしまって……
イングリッド様のご懐妊がちょうど良い時期だからということで、私が乳母の筆頭となることが決定してしまったのよね。
通常の乳母だと、自分の子どもは自宅において、その子を乳母任せにするんだけど、私自身が薄っすらと王家との血縁なので、ハワードも出入りを認められたのよ。
曾祖母のエヴァレット・マイラ様が王弟殿下に嫁いで……その三男の孫が私、アメリア・マイラとなるのだから、血筋的には然程近くもなく遠くもなくっていう感じで、王家でこれから産まれる王女さまの婚約者候補、という立ち位置にあるらしい。
やっと首が座ったばかりの赤ん坊に、そこまで求めないでほしいんだけど、この至れり尽くせりの状況に置かれてしまったので、ある程度の義務は果たさなといけないみたい。
読みに来てくださってありがとうございます。
すみません、多分本当に不定期投稿になります。




