33話「決戦の時」
「武器は初期のままでいいの?」
「うん。どうせ変えたところでダメージ入らなさそうだし、コピー特技回して戦うから必要なし!……ん?」
リアがアミと装備についての話をしながらアスハの準備を待っていると、1件のチャットがリアの元に届いた。
―こんにちは~! 今、ログインしました。良ければ何かしませんか~?
ログインしたミオが、リアにチャット送ってきた。
―こんにちは! 今から、廃墟村に居るデカくて強いガイコツいるじゃないですか? あのモンスターを討伐しに行こうと思ってるんですけど、見に来ませんか~!?
―え、廃墟村に居る大きなガイコツって、まさか【ジャイガンティック・スケルトン】のことじゃないですよね……?
―えっと、そんな名前のやつです! 電気流したり、隕石落とすモンスターです!
―た、倒せるのですか!?
―出来る対策は全て立ててます! 一緒に戦うというよりは、私が戦っているのを見る感じにはなっちゃいますけど、それでも良ければどうですか!?
―すごく気になりますので、是非ともお供させてくださいー!
ミオもあのモンスターについてはよく知っているらしく、倒せるかもしれないということにかなり興味を持ったようだ。
「もう一人、私の戦闘を見守ってくれる人が来ることになった!」
「え、そうなの?」
「実は最近、お友達になった人がいるんだー! 今ログインしてきて、これからのことを話したら、来るって!」
「リアにも、遂にオンラインの友達が出来たかー! どんな人なんだろ」
「すっごく穏やかで良い人なんだ!」
リアはミオに上層から出たとこで、待ってもらうようにお願いしておいた。
準備を終えたアスハとアミの二人とパーティを組み、上層から高原へと出る。
「あ、こんにちは!」
「ミオさんだ~!」
ミオはすでに先ほど言った場所で待機しておいてくれた。
「え、ミオってまさかエキシビションマッチに出られてた方……?」
「あ、そうです! ミオと申します! 初めまして~!」
「紹介します! リア友のアミと、私たちで作ろうと思ってるギルドに参入してくれる予定のアスハちゃんです!」
「は、初めまして! アミと言います!」
「あ、アスハと言います。よ、よろしくお願いします……」
リアのフレンドがまさかの上位プレイヤーで、アミもアスハもかなりびっくりしている。
「ど、どこで知り合ったの?」
「ギルド勧誘から逃げた先が、雪の洞窟だったーズです!」
「はい、まさかの出会いでした!」
「な、なるほど……。上位同士、出会うきっかけが普通と違うってことだね?」
「え、エキシビションマッチに参加した人が二人も……!」
アミは二人の出会い方にちょっと苦笑いをし、アスハはこのゲームでの有名人二人が目の前に居ることに大きく感動している。
「チャットで聞きましたけど、本当に倒せるのですか?」
「行けると思います! あのモンスターの特技で、エキシビションマッチに苦戦しましたからね。その理由を分析したら、結果的にあのモンスターの対策になりました! まぁ、特技の回転率とか色々とあるので、ダメな可能性ももちろんありますが戦えなくはないはずです!」
「それでも凄すぎますよ! 本当に楽しみです」
早速パーティにミオも入れて、廃墟村へと向かうことにした。
アスハのレベルだと、高原のモンスターは狙ってくる可能性があるので、進む先に居るモンスターは3人でひたすら蹴散らしながら前に進んだ。
そして廃墟村へと到着すると、いつものようにゴースト狩りをするプレイヤーが多くみられる。
「まず倒せるかどうかが大事だけど、倒せるなら何かいいアイテムとか装備品とか落として欲しいな~」
「ユニークモンスターだし、かなりその可能性は高そうだけどね~」
「手に入るなら、4人みんな貴重品ゲット!なんてこともあり得るからね!」
「素材なら、またすごい装備品の素材になりますね~!」
「い、いいのですか? もしそうなった時、貰ってしまっても」
「もちろん~!」
みんな【ジャイガンティック・スケルトン】に襲われることに怯えているプレイヤーしかいないのに、ここに居るメンバーだけは倒せた後に起きることを色々と想像して勝手に盛り上がっている。
高原に居たモンスター同様に、目の前に出てくるゴーストを薙ぎ払いつつ、奥へと歩みを進める。
すると、いつものようにプレイヤーを追いかけまわす【ジャイガンティック・スケルトン】を発見した。
「お~あの顔、懐かしいなぁ! お世話になったの数日前だったけど、もう違うモンスターとばかり対面してきて、懐かしさを感じる」
「あのモンスターに親しみがあるって時点で色々とおかしいよ……?」
「やっぱりみんな逃げることしか出来ませんね」
「す、すごく大きくて怖いモンスターですね……」
恐ろし気に目の部分が輝くあの姿にも、なんだか親しみを感じつつある。
「じゃあ、仕掛ける前に準備する!」
「私たちはどこら辺に居たらいい?」
「うーん、ターゲット捕捉出来る位置までかなり遠いから、この辺りでゆっくり見て貰ってたら」
「頑張ってください!」
「ダメだった場合は、アスハちゃんの護衛を二人にお任せするね」
「はい! お任せを」
一通り打ち合わせを終えて、他のプレイヤーを追いかけまわす【ジャイガンティック・スケルトン】にターゲットを捕捉できるところまで近づく。
そして【煙幕】を連続で発動させる。
「追いかけまわされているプレイヤーさんたちが囮になって、戦闘準備を整えていける。何か申し訳ない気もするけど」
【煙幕】の重ね掛けが終わると、次は【イリュージョン・カウンター】を発動させて分身を作り出す。
最後に【ガラスの殺陣】を展開し、攻撃を受け止める準備は整った。
「それじゃあ、そろそろ仕掛けますか!」
今まで習得してきた攻撃特技、先手となる一発目に選択したのは……。
「いけぇ、アイスマター!」
一番ダメージ数が大きい【アイスマター】を選択し、大きな氷塊を2つ作りだす。
選んだ理由としては、ダメージ数が大きいこともあって次発動するまでのチャージ時間が一番かかると踏んだからだ。
透明な壁を張り、立ち込める煙の中で分身を張った一人の少女が、巨大ガイコツに向けて、氷塊を飛ばした。
まっすぐ氷塊2つは飛んでいき、他のプレイヤーを追いかけまわす【ジャイガンティック・スケルトン】に激しくぶつかった。
その衝撃に、思わず体がよろけたが、すぐに体勢を立て直してゆっくりとこっちを見てきた。
「さぁ、来い!」
【ジャイガンティック・スケルトン】は煙が立ち込める先に見える小さな影を見つけた瞬間、おぞましい雄たけびを上げて、近づいてきた。




