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31話「防御系特技の使い方」

「これまで集めた素材、ひとまずアスハちゃんに全部あげちゃおうかな? 何か強力な装備とか作れるかもしれないし!」

「良いんですか?」

「うん。また必要になれば集めれば良いだけだからね~!」


 先ほどまで集めていたアイテムを、今度はアスハに全て渡した。

 リアとアミにとってはもういつもの光景なのだが、アスハは自分の袋に大量のアイテムが流れ込んでいく姿に、混乱している。


「こ、こんなに集めてるんですか!?」

「遂に、私以外でこの光景を見ることになったけど、やっぱりその反応になるよね……」

「とは言っても、最近はエリアで拾えるアイテムばっかりなんだけどねー」

「み、見たことないアイテムばっかりだ……」

「この先で採れるアイテムしかとってないから、結構強い装備で使う材料ばっかりなんじゃないかな?」

「こ、このエリアで拾えるアイテムですか!? ずっと手に入らなくて、挑戦できなかった装備の中に、作ることが出来るものがあるかも……!」


 未知のアイテムを獲得できたことで、更なる職人活動への期待感に、アスハは目を輝かせている。


「もし使わない場合は、市場に出すと他の用途で使う人が買うと思う! あんまり出回ってるとは思わないし高値がつくと思うから、他の素材費に充ててくれてもいいし!」

「ありがとうございます! 早速、何か作れないか見てみます! リアさん初期装備ですし、何か作ることの出来る強い装備があれば、チャレンジしてみます!」

「本当!? お願いしちゃおっかな!」


 アスハは早速、新しい装備を作ることが出来ないかどうか、確認しに行くようだ。


「リアはこれからどうするの? あのデカいガイコツ倒すって言ってたけど」

「ガイコツって何ですか?」

「上層から出ていけるエリアの先に居る、ひと際強いモンスターだよ。今のところ、誰も倒せないと思う」

「そ、そんなモンスターを倒す計画立てているんですか?」

「そういうことー! で、討伐するために必要なこととして、煙幕の強化が必要でさ。それがレベル40で出来るから、昨日40まで上げたんだけど……」

「き、昨日1日で、30から40まで一気に上げたってこと……?」

「す、凄すぎませんか?」


 1日で、そこそこなレベルから更に10上げることが大変なことは、アミもアスハもそれなりに理解している。

 さらっとリアは言ったが、二人は普通に困惑していた。


「この先に居るベヒーモスを乱獲すれば、割とすぐだったよ?」

「も、もうベヒーモス倒してるんだ……」

「こ、この先ってベヒーモスがいるんですか!?」

「リアの話だと、そうらしいよー。ただ、到達できているのがリアだけだと思うし、私も話だけしか聞いてないから、よく分からないんだけどね」


 リアが話せば話すほど、二人がどんどん引いている。


「で、ちょっと話がずれちゃったんだけど、40になったことでコピー出来る特技の数が新たに2つ増えたんだよね。それで、追加の攻撃特技を習得したら、突撃してみようかなって」

「ただでさえぶっ飛んでるのに、またおかしな特技が2つも増えるのかぁ。リアのこれまでの事と話を聞く限り、本当に倒せる気がしてきた」

「リアさんの使っていた派手な特技って、モンスターが使う特技なんですか?」

「そうそう! 何かよく分からないアイテムみたいなのを手に入れちゃって、それのおかげで、色々と習得できるようになったの!」

「ちなみに、新たに覚える候補とかあるの?」

「それなんだけど、ベヒーモスが使う特技が欲しいんだよね。ただ、あいつの使う特技って2つあってさ。街に戻る前にチャレンジしたら、外れの方ひいちゃった」

「ちなみに、その外れの特技はどんな効果なの?」

「ライトニング・チェインとあんまり変わらないから、凄く微妙」

「いや、それってイベントで使ってた電気技のことでしょ? 普通にすごいじゃん……」

「いやいや。あのガイコツに必要なのは、それじゃないんだよ!」


 リアは熱く語ったが、二人は顔を見合わせるばかりで、少しも共感してくれなかった。

 アミはため息をついて首を横に振り、アスハは頷いてくれているが、よく分からないという顔をしてしまっている。


「ということは、リアはこれからその目的の特技を、習得するための作業をする感じ?」

「そうだね。そんなに何回もチャレンジはしなくても、すぐに獲得できるとは思うんだけどね」

「じゃあ私は、ギルド勧誘活動を考えながら、アスハちゃんの職人やってるところ見学しようかな?」

「私も募集活動やろっか? なんか丸投げにして申し訳ないし」

「いや、リアが募集すると、異常なくらい人が集まりそう。多く集まるってことは、変な人もいるだろうし、名前は出さずに私が地道にやるからいいよ」

「そっか、何か私に出来ることがあったら言ってね」

「うん」


 話を終えて、リアは二人と別れて再び雪原に向かって歩みを進めた。

 こうしてギルド加入希望者が来て、活動に幅が出てきた。


「あのユニークモンスターが討伐出来ることで、何か恩恵があればなぁ」


 アミはこれから出来るギルドのために動いてくれているし、アスハも加入してくれることになった。

 適当な思い付きで自由にプレイしているが、【ジャイガンティック・スケルトン】を討伐できるようになって、何かしらの形で二人に還元できればいいのだが。


 アスハの職人作業のことも考えて、より丁寧にアイテム回収をしながら進んで行く。

 これだけ何回も通っていると、マップなどを確認しなくても、自然と道が分かるようになってきている。

 そんなこともあって、移動もアイテム回収もスムーズに進めながら、雪原へ足を踏み入れた。


「最近、毎日のように来るようになったなー」


 未だに誰も来ていないのに、リアだけおなじみの場所になりつつある。

【アイスワイバーン】と一度顔を合わせて以来、奥までは進んでいないが、雪原の手前半分くらいは、何となく地形を把握しつつある。

 採取できるアイテムは、ひとまずすべて回収していく。


「よし、じゃあ街戻り&特技コピーチャレンジしますかぁ」


 把握できる範囲内のアイテムを回収し終えると、昨日考えた戦術であのツノ攻撃の特技を受けて力尽くべく、【ベヒーモス】に戦闘を仕掛ける。

【煙幕】を何重にも発動させ、【ライトエレキスロー】でこちらに気付かせる。

 レベルが40になっても、【ライトエレキスロー】の一撃は乾いた音を立ててはじき返され、何の効果もない。


「いくら初期装備でスキル振りもしていないからと言っても、ここまでして1ダメージも与えられないの、悲しすぎるなぁ……」


【ベヒーモス】相手に、どれくらいのステータスになれば満足に戦えるのか、全く分からないので何とも言えない。

 だが、スキル振りで得られた特技なので、多少なりともダメージが入ってもいいと思うのだが。

 イベントでも、装備をガチガチに固めた相手の強い特技を初期装備で受けたが、それでも即死レベルでなかった辺り、やっぱり攻撃力としては微妙なのかもしれない。

 やれることは幅広いと思うのだが、やはり盗賊単体での戦闘力はイマイチとしか言いようがないのかもしれない。


 昨日同様に、【煙幕】による命中率低下で、通常攻撃を難なく回避することが出来る。

 ただ、特技コピーを狙う以上はこちらが倒してしまってはいけないので、適当に武器を振り回しては弾かれる、ということを繰り返して特技発動を待った。

 しかし、【ベヒーモス】はなかなかリアの望むような動きをしてくれない。

 飛び上がって、【ジャンピング・クエイク】を発動して衝撃波を作り出そうとした。


「またそっちかぁ……」


 ここは不屈の魂が発動するので、喰らったところでHPが1だけ残る。

 ここまでは昨日と同じ。

 ただ、昨日は普通にこの【ジャンピング・クエイク】を連発され、あっけなく力尽きてしまった。


「飛び上がってから衝撃波が来るまで、僅かに時間がある。もしここで来るようなら、ガラスの殺陣を使うか……!」


【ガラスの殺陣】の展開は非常に速いので、【ベヒーモス】が飛び上がって着地した衝撃がリアに届くまで、十分発動させられる。

 ここまで来るのは結構面倒なので、1回1回のチャレンジを大事にする必要があると、リアは考えた。

 すると、再び【ベヒーモス】が飛び上がる。


「やばっ! ガラスの殺陣!」


 どんな動きをしても良いように身構えていたので、リアは相手の動きを見て、すぐさま【ガラスの殺陣】を展開した。

 衝撃波が届くまでに透明な壁が築かれ、すぐに衝撃波で粉々になる。

 粉々になった破片が【ベヒーモス】に突き刺さって、動けなくなった。

 いつもなら、ここで特技を発動して倒すのだが。


「早く動いてくれー」


 動けなくてもがいている【ベヒーモス】を、リアが棒立ちで見つめるという、異様な状況が出来上がった。

 少しすると、体勢を崩していた【ベヒーモス】が建て直し、再び攻撃を始める。

 通常攻撃を必死にかわしながら、リアは我慢強く待ち続ける。


「衝撃波、3回連続は勘弁してください……!」


 そんな願いが通じたのか、遂に【ベヒーモス】はツノに真っ黒な魔力を溜めこみ始めた。


「遂に来たー!!!!」


 待ちに待ったモーションに、リアははしゃぎながら【煙幕】の中から飛び出した。

 そんな奇怪な動きにも動じることなく、【ベヒーモス】はリアに向かって突撃したきた。

 安定の視界の暗転が起きて、しばらくするとレグルスタードの街に戻ってきていた。


「やっとだ……! ガラスの殺陣、本当にありがたい!」


【ガラスの殺陣】をこんな用途でも、有効活用出来ることが分かってしまった。

 本気で戦う時といい、特定の攻撃を受けたい時といい、リアにとってあまりにも相性が良すぎる特技だった。


「来たっ!」


 ―特技をコピーしました。

 ダークラッシュ……二本のツノの間に、エネルギーを溜めて突進する。対象一体に300~320ダメージを与え、毒状態にする。ダメージ量はレベルによって増加しない。なお、攻撃対象が毒耐性100%、あるいは毒を使用する魔物など一部の相手には、毒状態に出来ない。


「あ、あれって毒を含んだ魔力だったんだ……」


 最初に見た時は、【ガラスの殺陣】で難なく防いだが、これを喰らってしまうと不屈の魂が全く意味が無いものになっていた。

 即死級ダメージで、毒状態にする。

【ガラスの殺陣】を習得しなければいけない、と考えに至った時に頭によぎった内容とまさに同じ。


「今後、イベントで不屈の魂持ちのプレイヤーが出たら、これで蹴散らせそう! でも、私ツノないけど、どうやって攻撃するんだろ?」


【ガラスの殺陣】の一件以来、周りからどう見えるか少し気になっているリアだが、これで【ジャイガンティック・スケルトン】討伐するために必要と考えたことを、全て習得することが出来た。

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