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28話「レベル40と能力強化」

【ベヒーモス】と戦闘をして、何とか倒せることが分かって以来、リアは2時間以上雪原に籠ってレベル上げをしていた。


「ベヒーモスに変えてこのペースかぁ……。グザさん含めて上位の人たちって、凄く長い時間、集中してプレイしてるんだろうなぁ」


 オンラインゲームだからなのか、レベルが上がるごとに次のレベルアップまでに求められる経験値が、どんどん多くなっていく。

 普通に一人でやるようなオフラインのゲームなら、もっとすんなりとレベルが上がるイメージなのだが。

 リアは普通のプレイヤーに真似できないやり方で、圧倒的な強敵を短時間で倒しながら格上モンスターの討伐ボーナスをもらって、このペースである。

 もちろんほかのプレイヤー達は、もっと弱い敵を倒しながら経験値を溜めているはずなので、なかなかに時間がかかるだろうなとリアは思った。


「もし、ミオさんがレベルアップが大変だって言うようなら、パーティー組んでここら辺のモンスターでレベルアップのサポートしてもいいかもしれない!」


 オンラインゲームである以上、こうした冒険以外にも職人作業やオンラインでのコミュニケーションなど、やれることはたくさんある。

 ただ、ゲームプレイできる時間は誰にとっても有限なので、ミオがもし大変そうにしていれば、そう言ったサポートも出来るのではないかとリアは考えた。


「ふぃーっ! やっと40になったぞー!」


 そんなことも考えつつ、ひたすら【ベヒーモス】の討伐を続けて、ついにレベルが40に到達した。


「これで煙幕の強化も出来るようになったかな~?」


 攻略サイトで見た情報通りなら、これで【煙幕】の強化が出来るようになったはずである。

 リアはログを確認して、強化できるようになったか確認してみた。


「おお、強化出来るようになってる……! それに、特技コピー出来る数が6から8に増えた!?」


【煙幕】強化が可能になったことを知らせる他に、レベルが40になったことでコピー特技の習得可能数が、6つから8つに増えたことを知らせるログも、同時に届いていた。


「またこれで2つだけにはなるけど、新しい特技が追加できるぞー!」


 本音を言えば、10個ぐらいにまで増えて欲しかったが、ただでさえあれだけイベントで暴れたことを考えると、2つの追加枠でもありがたい。

【ベヒーモス】のツノ攻撃を始めとして、今後も気になる特技が必ず増えてくるので、今後何も追加できないとなると辛いところだった。

 煙幕はシステムログから、【煙幕】の強化についての設定変更が出来たため、グザが使っていた時と同様に、砂煙を含むような設定に変更した。


「これでとりあえず、あのデカいガイコツに対抗する手段を、手に入れられたわけだけど……。ユニークモンスターは体力すごく多いだろうから、今の攻撃系特技3つじゃ、やりくり難しいかな?」


 何も考えていなかったが、特技が新たに2つ追加できるとなったことで、【ジャイガンティック・スケルトン】を討伐する上で、いつも使っている攻撃特技3つでは少し足りないのではないかと、リアは考えた。

 一度の戦闘で、二回目の特技発動をするまでどれくらい時間がかかるかまだ全然調べていないが、今までの感じから考えると、そんなに早く再発動出来るイメージはない。

 あと1つか2つぐらい攻撃系特技を覚えて、順番に発動させていき、最後の特技を発動させ終わった時点で、最初に発動した特技のチャージが完了しているサイクルを作れると、安定して戦えそうだが。


「もしそれがダメだとしても、攻撃系特技の数を増やすのは、マストになって来ると思うんだよなぁ……」


【ベヒーモス】たちが徘徊する雪原の片隅で、リアは今後の特技運用に関してしばらく考えた。


「取りあえず今日の目標は達成したから、ベヒーモスに街へ戻してもらおうかな」


 集中力を要するレベル上げを数時間行って疲れたしまったので、ひとまず街に戻ることにした。

 いつものように力尽きて街に戻るというスタンスは、相変わらずである。

 おそらく街に戻ると、またギルド勧誘がたくさん来ることも考えられる。

 ミオの試合を含めてエキシビションマッチを見たいのもあるので、ギルドに関して頑張ってくれているアミには申し訳ないと感じつつも、先にログアウトすることをチャットで伝えた。


「ベヒーモスの特技、あの頭突き技とか習得できないかなぁ……?」


 不屈の魂を持ってしまったことで、特技で即死することが出来なくなってしまったので、また【メテオ・ストライク】の時のように、タイミングよく繰り出してもらうまで根気よく待つしかない。

 そうなってしまうと、なかなかにここまで毎回来てはやられるを繰り返すのは、大変な作業になってしまうが……。


「……あの時のグザさんみたいにひたすら煙幕を張りまくって、あの頭突き特技のモーションが出たら、煙幕から飛び出してわざと受けに行ったらどうなるんだろ?」


 リアは、先ほど強化した【煙幕】を重ね掛けして、ベヒーモスの通常攻撃を回避して、習得したい特技を発動しそうになった時に、【煙幕】の範囲からわざと飛び出して攻撃にあたれば、効率よく特技で力尽けるのではないかと考えた。

 問題は衝撃波の攻撃で、範囲攻撃は命中率を下げたところで避けられそうな気がしない。

 正直なところ、今は【ジャイガンティック・スケルトン】単体に強い攻撃を与えられそうな攻撃特技が欲しい。

 そうなってくると、体力を1にされる時に喰らう分にはいいのだが、力尽きる際にはあまり受けたくないというのが本音。


「ここばかりは運かなぁ……?」


 考えてばかりでも仕方がないので、一先ずは実践してみることにした。

【煙幕】を気づかれずに接近するためにも使用して、接近してターゲットを定めてからも大量使用する。


「盗賊で得られる特技が、こんなに実用性が高いとはなぁ……」


 目の前が煙まみれになりながら、【ベヒーモス】に向かって【ライトエレキスロー】を投げ込む。

 見た目からして、ナイフが軽く刺さっても良さそうな見た目をしているのに、カキーンと乾いた音が鳴っていつも通り弾き飛ばされた。

 煙幕に包まれているリアに、【ベヒーモス】が近付いてきた。

 通常攻撃を繰り出してくるが、見当違いなところに攻撃したり、こちらの動きをゆっくりと追いながら攻撃してくるのが丸見えなので、余裕で回避することが出来る。


「よしよし、通常攻撃の問題は何とかなる!」


 通常攻撃を何回か外した後、ベヒーモスは大きくジャンプをして衝撃波を走らせてきた。

 凄まじい衝撃波に、いつものように一気に体力が1まで減らされてしまった。


「ここで先に衝撃波をしてきたってことは、次は頭突きの可能性が高いのでは……!?」


 リアはそんな期待を抱いた。

 しかし、そんな期待とは裏腹に【ベヒーモス】はまた少し跳ね上がり、また大きく地面を揺らしてきた。


「そっちは連続で使えるのかぁ……」


 衝撃波を避けることは出来ず、かろうじて残っていた体力は0になって目の前が真っ暗になった。


「そんな簡単にはいかないかぁ……」


 レグルスタードの街に戻ってきて、リアはため息をついた。

 念のため、ログを確認してみた。


 ―特技をコピーしました。

 ジャンピング・クエイク……ジャンプして、大きく地面を揺らした衝撃波で相手を攻撃する。150~200の物理ダメージを複数の相手に与える。ダメージ数は、レベルが上がると増加する。


「う~ん……」


 効果は【ライトニング・チェイン】とあまり変わらないため、リアとしては微妙に感じた。

 こういう範囲特技は、今のところ一個あれば十分だと考えているからである。


「それに、私の体格でこれ使えちゃっていいのか……?」


 一番自分の見た目にも合っていないような気もする。


「と、登録できている間は残しておこうかな?」


 枠がいっぱいなわけでもないので、わざわざ削除する必要もない。

 ひとまずは残しておくことにして、ログアウトすることにした。


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