27話「新たな行動」
「そろそろベヒーモスと戦闘してみようかなー」
ミオと別れてから、再びレベル上げを始めたリア。
【サハギン】や【オーク】をひたすら乱獲していたが、少しターゲットを変えることを考え始めた。
未だに【ベヒーモス】とは戦闘をしたことが無いが、見た目や生息エリアからしても【サハギン】達よりも強いのは間違いない。
どのモンスターも攻撃力が高すぎて、盗みなどの効率性はどっちにしても変わらないので、それならもっと強い相手と戦って更に多い経験値を獲得した方が効率が良い、と考えた。
親近感を覚え始めた【サハギン】をこれ以上倒すのも、ちょっと心が痛んできているのもあって、ひとまず雪原まで進んで行くことにした。
「メテオ・ストライクで倒せるかなぁ……? 明らかに体力が多そうだけど」
あの巨大な見た目、いかにも体力があるといった感じを受ける。
強ければ強いほど、ある程度のモンスターが全てのステータスが上がるはずなので、【メテオ・ストライク】の一撃で倒せそうな気がしない。
「そうなってくると、アイスマターを使うことになるけど、雪原に居るから氷技に耐性がありますとかだと、無理かなぁ……」
リアがちょっと考えただけでも、倒せるかどうか微妙な要素が何個か浮かぶ。
ひとまず挑戦してみてダメだった場合は、申し訳ないがレベル40まで【サハギン】達に犠牲になってもらうしかない。
アイスワイバーンに遭遇した日から、定期的にアイテム集めでお世話になりつつある雪原。
足跡一つなく、雪が真っ白に積もったフィールドが広がっている。
相変わらずリア以外のプレイヤーが、このエリアに来ている印象はない。
「あ、いたいた。この子達がプレイヤーとまともに戦いだすのは、まだまだ先になるのかなぁ?」
ゆっくりと辺りを地響きをたてて歩き回る【ベヒーモス】。
プレイヤーもいないため、ただただゆっくりと徘徊する姿は、とても暇そうに見える。
【煙幕】を張って丁寧に近づいてから、【ベヒーモス】にターゲットを合わせる。
【イリュージョン・カウンター】と【ガラスの殺陣】を丁寧に張ってから、戦闘を仕掛ける。
「まずは……。メテオ・ストライク!」
こちらに気が付いていない【ベヒーモス】に対して、万全の対応を整えてから、更に【メテオ・ストライク】を発動した。
すっかりおなじみになった巨大隕石が降り注いで、【ベヒーモス】の地響きに負けないぐらいの激しい振動を巻き起こした。
激しい衝撃に雪煙が上がる。
しかし、その煙を引き裂いて、【ベヒーモス】が飛び込んできた。
「や、やっぱりこれだけじゃダメかー!」
飛び込んできた【ベヒーモス】は巨大な2本のツノに何やら黒い魔力を溜め始める。
そして、そのエネルギーを帯びたツノで、リアに向かって突進してきた。
しかし、リアは【ガラスの殺陣】を展開しているので、ツノ攻撃は透明な壁にぶつかった。
そして、粉々に割れた壁の破片が突き刺さって、【ベヒーモス】は動けなくなった。
「さ、流石に雪の洞窟にいるユニークモンスターの特技だから、このレベルの相手でもしっかりと効くのね。よかった」
動けなくなった相手に、リアは更に【アイスマター】を発動させる。
二つの氷塊を一気に目の前で動けなくなった【ベヒーモス】に当てた。
すると、【ベヒーモス】が吹き飛んで、ダウンさせることが出来た。
「せ、セーフ……! あのツノ攻撃、やばそうだった」
どす黒い色をした球体が、2本のツノにため込まれていた。
今まで強力モンスターの特技を何個か見てきたが、これも想像以上の迫力のある技だった。
「あれもコピー出来るのかなぁ……? ツノありきの技なら、ブレスとかみたいにコピー出来ない可能性はあるけど」
モンスターにはツノや大きな鉤爪、翼と言った人間には無いものがある。
魔法やブレス系はコピー出来ないという説明しかなかったが、こう言った人間には持ち合わせないようなモンスターの身体的特徴を生かした特技は、どうなるのか未だによく分かっていない。
あのツノ攻撃を受ければ確実に力尽きるので、コピー出来るかどうかについては短時間で検証が出来るとは思うのだが、今はレベル40にすることと、仮に習得出来たとしても、削除する特技が今のところは何もないので、検証は後日することにした。
その後何回か戦闘をした結果、【メテオ・ストライク】と【アイスマター】どちらも発動させてようやく倒せることが分かった。
耐性などの影響もあるかもしれないが、ざっと考えて体力が1000以上はあると思っていいだろう。
更に、あのツノ攻撃以外にあの巨大な体を生かして、地面に衝撃波を走らせてこちらに範囲攻撃を仕掛けてくることも分かった。
ただ、【ガラスの殺陣】の効果はすさまじく、範囲攻撃だろうと確実にガードしてくれることが分かった。
【イリュージョン・カウンター】なら、分身と一緒にリアも消し飛ばされるのだが、この結果を受けてさらに【ガラスの殺陣】が頼もしく感じる。
「バタバタするけど、どんな行動をしてきても、ガラスの殺陣があればどうにかなりそうだね! 経験値も大きい!」
経験値は、【サハギン】の2倍近くもらえている。
どちらにしろ、戦闘に余裕はあまりないので、このまま【ベヒーモス】を討伐してレベルアップを図ることにした。
リアが遂に、雪原で【ベヒーモス】でレベル上げを始めたころ。
「うーん。どう募集するかだなぁ……」
レグルスタードの街にいるアミは、すでにギルドメンバー募集の張り紙が大量に張り付けられた掲示板の前で、悩んでいた。
アミはエキシビションマッチに出ていないので、装備自体は目立つものの、そこまでギルド勧誘を受けずに、街に居ることが出来ていた。
そもそもアミはこういったゲームに慣れているので、断り方などについても分かっている。勧誘されてもそれほど苦にしていない。
ただ、想像以上にギルドメンバー募集が過熱している現状を見て、アミは悩んでいた。
「この感じだと、中途半端な募集じゃあ誰も来ないね」
何かこれから作るギルドに特徴を出して、アピールしていかなくてはならない。
「私たちが作るギルドである以上、アピール出来るのは……」
簡単に考えることが出来たのは、以下の2つ。
・アミとリアが中心になって作っていくなら、イベント10連勝した二人が作りますという、ガチ勢を引き込むようなアピール。
・女子二人が作るので、女の子が多いor女の子だけのギルドに入りたいと考えている女性プレイヤーを、引き込めるようなアピール。
「ガチ勢を引き込むと、トラブル発生率が飛躍的に上がるからなぁ……。リアは無双はしてるけど、別にガチでやってるわけじゃないからなぁ」
リアは勝ち負けなど、ある程度は気にしたりする性格ではある。
ただ、イベントに初期装備のままで突撃したりと、そこまでガチムーブをしていないことも多い。
リアのスタンスにも合わないし、何よりもリアが嫌がるトラブルが起きることを考えると、前者は採用しない方が良いとアミは考えた。
「女の子ギルド的な感じで募集してみようかな?」
募集に集まってくるかどうかわからないが、アミはひとまずその内容で募集をしてみることにした。




