表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

30/37

26話「初めて出来たオンラインの友達」

「これでレベル35かぁ……。当たり前だけど、30まで上げた時に比べたら、ぼちぼち時間がかかるようになってきたなぁ」


 1時間ほど雪の洞窟に居るモンスター達を乱獲し、レベル35まで上げたところでふぅっとリアはため息をついた。

 オンラインゲームにおいて、30から35まで上げるのが1時間で済んでいる時点で、なかなかに早い。

 ただ、常に煙幕を張って気づかれないようにしながら戦うというのは、結構疲れる。

 気づかれないように移動するだけなら、距離感を取っておけばどうにでもなるのだが、戦おうと思うと、かなり接近しないといけないので苦労してしまう。

 単純作業は得意だが、こう言った一つ一つの行動に神経を使わないといけないことに関しては、どうしても長続きしない。


「一回、街に戻りたいけど……。街に入ると、またギルド勧誘地獄だよなぁ……」


 体に「ギルド決まっています!」と張り紙張り付けておくか、ペイントでもしておかないと、また先ほどの繰り返しになることは、容易に想像が出来る。

 そんなリア以外誰もやることがなさそうな行為は、もちろんこんなゲームで実行できるわけもない。


「街の入り口付近で、休憩するしかないかぁ……」


 親切な仕様で、雪の洞窟とはいえ、街の入り口付近にはモンスターが湧かないようになっている。

 そこでなら、煙幕を切って多少座ったり、ボーっとしたりしても、モンスターに絡まれずに休憩することが出来る。


「いっつも死んで戻るのが、当たり前だったからなぁ。こうしてちゃんと自分の足で戻るのは、何気に初めてというね」


 街と逆方向に歩みを進めることしかなくて、街の方向に戻ることをしたことがない。

 そのため、凄い違和感がある。

 通り慣れた道を引き返していくと、街の入り口が見えてきた。


「ん?」


 リアが街の入り口まで戻ってくると、鎧に身を包み、大きな剣を背負った一人の女性が、洞窟の岩肌にもたれかかっている。

 見る限り、リアたちと同じくらいの年に見える。

 入り口とはいえ、雪の洞窟に入ってくる人は見たことが無かったので、リアは少し驚いた。


「ひぃっ!? モ、モンスター!? ……って、あれ?」

「お、驚かせてすいません」

「い、いえ……」


 リアの姿を見ると驚いた様子で身構えたが、モンスターではなくプレイヤーだと認識して、身構えるのを止めた。


「もしかして、リアさんですか?」

「あ、はい。そうです」

「こ、この先に行ってたんですか?」

「そうですね。レベル上げにちょっと行ってたので」

「れ、レベル上げ……。まだ35なのに?」

「さっきまで30だったので、5つ上げてきたところです」

「そ、そんなレベルで……。やっぱりああいう特技を持っていると、何でも出来ちゃうんですね」

「あなたは何故ここに?」

「申し遅れました。私、ミオと申します。昨日エキシビジョンで戦ったのですが、覚えておりませんか……?」

「えっと……」


 リアは自分の番が終わると早くログアウトしてしまったので、何も分からなかった。

 見た目で強そうだとは思っていたが、やっぱり強いプレイヤーだったらしい。


「すいません。昨日、自分の番が終わったらもうすぐにログアウトしてしまって」

「そうだったのですね。合計11回戦いましたもんね。私も自分の試合が終わったら、すぐに落ちてしまいました」

「そんなミオさんが、どうしてこんなところに?」


 上位プレイヤーが、こんなところで一人何もせずにいるというのはとても不自然なので、気になって尋ねてみた。


「今日ログインしたら、ギルド勧誘がすごくて……。街に居る時はもちろん、プレイヤーが多いエリアなら、ところかまわず声をかけられてしまいまして。やっと落ち着けたのが、ここでして……」


 ミオはちょっと苦笑いをしながら、こうなってしまったことについて話してくれた。

 その理由は、まさにリアが今日悩んでいたことと同じだった。


「それ、私もです……!」

「やっぱりそうでしたか……! エキシビションマッチに出たら、名前と見た目を知られてしまうので、リアさんもそうなりますよね」

「知らない人に、あれやこれや言われるの、しんどいですよね!」

「り、理解者がいてくれた~!」


 ミオはほっとした様子を見せつつも、嬉しそうに笑った。

 そんな柔和な印象に、リアとしてもとても親しみを感じた。


「レベル上げ、疲れちゃってちょっとここで休憩しようと思ってたんですけど、良いですか?」

「もちろん。ここまではモンスターって来ないんですか?」

「経験上、来なかったと思います。来たら、私が倒しますので大丈夫です!」

「た、頼もしい……!」


 リアはミオの隣に座って、話をしながら休むことにした。


「エキシビションマッチ、凄かったですね。みんな驚いてましたよ」

「もうちょっと圧倒できるかなって思ってたんですけど、煙幕地獄に遭って、なかなかに苦戦しましたけどね。ミオさんはどうだったんですか?」

「エキシビジョンでは、僅差で負けちゃいました」

「そうだったんですね。でも戦士ってプレイヤー数、特に多いですよね? 10連勝するだけでも相当ハイレベルですよね。観戦するだけしておけば良かったなぁ」

「公式アカウントがエキシビションマッチに関して、SNSとか動画サイトで配信してますよ」

「そうなんですね! じゃあ、後でミオさんの試合見てみようかな」

「負けちゃってるので、見られるの恥ずかしいな……」


 ミオはそう言っているが、戦士は圧倒的にプレイヤー人口が多く、人数が多い分上位もより強くなる。

 装備を見たところ、強そうではあるものの、シリーズで統一できているようには見えない。

 セット効果など無しでそこまで行っているのだとすれば、相当すごいのではないかとリアは内心思っている。


 その後も、二人はこのゲームであったことなどを話して、楽しく盛り上がった。


「申し訳ありませんが、この後用事がありまして。そろそろログアウトしますね」


 1時間ほど話をしたところで、ミオが用事があるということでログアウトすることになったため、会話はお開きになった。


「はい! 楽しくて、つい長話になってしまいました。ごめんなさい」

「いえいえ、こちらこそです。私もとても楽しかったです!」

「あの……。今度は一緒に遊びませんか?」


 ゲーム内でこれだけ話したのは、アミ以外に居ない。

 基本的にソロプレイをして、オンラインで人と繋がろうとしてこなかったリアにとって、初めて楽しく関わることの出来たオンラインの相手になった。

 このままお別れというのも寂しく感じたリアは、思い切って今度も会って遊ばないかと誘ってみた。


「はい、喜んで!」

「ありがとうございます! では、フレンド登録を……!」


 ミオは快く承諾してくれたので、早速フレンド登録をした。

 フレンド登録をした後、ミオがログアウトするのを見送った。


「良い人だったなぁ……」


 エキシビションマッチで対戦したグザもそうだが、リアが話した人は優しい人たちばかりだと思った。

 その一人とフレンドになれたことを嬉しく感じながら、再びレベル上げに戻った。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] エキシビションマッチで対戦したグザもそうだが、リアが話した人は優しい人たちばかりだと思った。 >>> どっかの話でやたらと知らないプレイヤーに勧誘されたってあったけどやたらとってついてるから…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ