25話「サハギンよりプレイヤーが怖い」
「さて、今日もやりますかね~」
イベントが終了した次の日、いつもと変わらずリアはゲームにログインした。
レベルを40まで上げて、【煙幕】を強化して【ジャイガンティック・スケルトン】を討伐するという目標に向かって行動していくことになるが……。
そんな街を歩いているリアに、ある出来事が起きた。
「あの~。リアさんですよね?」
「え? はい、そうですが……」
「もう所属するギルドとか、もう決めました?」
「い、いえ……。まだですけども」
「でしたら、うちのギルドとかいかがですか!?」
やたらと知らないプレイヤーから声をかけられたり、ギルドへの勧誘をされるようになってしまった。
実はリアたちがログアウトした後も、エキシビジョンマッチは他職業同士でも行われ、終了後にギルドなどの実装がされるというアナウンスがそこでされていた。
そのためリアは、自分の試合以外のエキシビジョンマッチがどのような状況だったかも全く知らず、ギルドシステム実装についても何も分かっていない状態である。
そのため、声をかけられるだけなら、エキシビジョンマッチに出たこともあってまだ分かるのだが、なぜにいきなりギルド勧誘が増えてきたのかがよく分からない。
「ギルドに入りたい!」とこちらからアクションを起こしているなら、知らない人から声をかけられるのも分かる。
だが、こちらから何もしていないのに、知らない人からよく分からない要件で声をかけられるのは、リアル同様に結構怖い。
この辺りも、リアがオンラインゲームを苦手とするところだったりする。
「い、今はまだ何も考えていないので……」
「でしたら、グループを組むメンバーと一度遊んでみませんか?」
「だ、大丈夫です!」
逃げ出すように、リアは下層の方に走って行って、雪の洞窟へ逃げ込んだ。
こういう時に勢いで引き込まれると、後々面倒なことになる。
特技コピーについて知りたいと思っているプレイヤーも多いはずなので、情報流出も防ぎたい。
「なんだろ、プレイヤーよりサハギンの方が、見てて安心感がある……!」
相変わらず先手を打たれないように、煙幕は張らないといけないのだが、【サハギン】は特に変なコミュニケーションを取ってくることはないので、こちらの方が安心感がある。
「モンスターの特技を使いだしたら、モンスターの方に親近感が湧き始めてきた……」
街に戻ると、先ほどの状況がまた起きるような気がしたので、このまま雪の洞窟か雪原でゆっくりと素材集めとレベルアップのために戦闘をしながら、アミがログインしてくるのを待つことにした。
「……仲間だと思ってるけど、ごめんね」
親近感を感じ始めた【サハギン】や【オーク】達に申し訳ないと感じつつも、討伐しつつ奥へと進んで行く。
すると、アミがログインしてきた。
早速チャットで今日、街で起きたことについて報告し、相談してみた。
―あー、もしかしてリア、ギルド実装されるって言うお知らせ、まだ見てない?
「ギルド、実装されるのかぁ……」
アミからギルドが実装されるという事実を聞き、ようやくなぜいきなりギルド勧誘が増えたのか、やっと理解することが出来た。
そうと分かれば、適当にもうギルドが決まっているとか言っておけば、流石に相手も諦めるだろう。
―ちなみに、アミはギルドに関してはどうするの?
―うーん。今までの経験上、どこかに入ると何らかのトラブルが起きてるってイメージあるからなぁ……。せっかくリアもやってくれてるから、あんまりトラブルとか起きているところ、見せたくないんだよねぇ。だから、私自身でギルド作ろっかなって
―アミ自身で作るの?
―うん。リアも色々やってくれていいよ。基本的に私たちで入れるメンバーは、よく考えよう? ギルドとかに対する考え方とか、プレイヤーさん自身の性格とかよく確認して
アミとしては、ギルドという大人数になると、何かとプレイヤー同士のトラブルが起きがちだという。
その上、今後イベントなどでギルド間での勝負などになると、さらにトラブルが起きる可能性が高くなるという。
イベントに対しての考え方などの方向性を決めてから、トラブルを起こしにくい性格の人などを、よく見ながら入れようという話だった。
「やっぱり、経験者としての考え方が色々とあるのね」
もちろんリアとしては、トラブルを避けられるに越したことはない。
アミがリーダー権限を持つなら安心も出来るし、理想的な形だと言える。
―賛成。対戦で知らない人とならまだしも、知り合い内でのトラブルとか見たら、確実に萎えてやらなくなると思うし
―でしょ。聞いている感じ、もうみんな人員確保に動いてるみたいだね。私もボチボチ募集とかしてみようかな? この感じなら、加入希望者がいない可能性もあるけど
―募集してなくても、声をかけてるぐらいだからね
―ひとまず、メンバーを募集してみるね。ちなみに、リアは今何してるの?
―知らない人にギルド勧誘されるの怖すぎて、サハギンやオークたちと友達になってる
―ああ、雪の洞窟に逃げ込んだのね……。そのあたりの逃げ方も、普通の人と何か違うよね
―昨日のイベントを踏まえて色々と振り返った結果、あのデカいガイコツを一人で倒せる算段が立ったから、その計画に向けて行動を続けて行く!
―本当に!? それは興味あるかも。こっちは、ギルド関係について色々とやってみるから、引き続き頑張って!
アミにギルドのことについて丸投げしてしまったが、彼女自身も【ジャイガンティック・スケルトン】を討伐することに期待をしているようなので、レベル上げを引き続き行うことにした。




