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24話「イベント終了と振り返り」

『勝負が決まりました! この戦いに勝利したのは、リア選手だ~!』


 誰もが見たことのない圧倒的な特技を使用し続けたリアが勝利し、観戦しているプレイヤーは沸き立っている。

 チートかと疑う者、純粋にすごいと騒ぎ立てる者、びっくりしてしまって拍手しか出来ない者、ただリアに対してテンションが上がっている者と、様々である。


「おかしい……」


 一方のリアは、運営がリアの勝利をアナウンスしているにもかかわらず、なぜ【ライトニング・チェイン】が、【煙幕】で防がれてしまったのかについて考えていた。

 グザに聞いてみれば何か分かったのかもしれないが、勝負をして先にグザはダウンしてこのフィールドから退場してしまったので、聞くことは出来ない。


「煙幕って強化とか出来るのかなぁ……?」


 もし、さきほどのように電気技を完全カットをリアも再現できるのであれば、【ジャイガンティック・スケルトン】を討伐することが出来るような気がしてきた。

 煙幕で【ライトニング・チェイン】を無効化し、命中率を極限まで下げて【メテオ・ストライク】を回避する。

 仮に当たることを考えても、【イリュージョン・カウンター】と【ガラスの殺陣】、不屈の魂で4回分は受けられる。

 こちらも攻撃をちまちま繰り出しながら、各特技のチャージ時間まで粘って絶えず防御態勢さえ整えておけば……。


『あの~……。リア選手、聞こえてますか?』

「えっ!? あ、はい!」


 リアの中でまた色々と考え事をしている間、ずっと声をかけられていたようだが、全く気が付いていなかった。

 中継されていることを思い出し、一人で考え込んでいる姿がずっと流れていたと思うと、急に恥ずかしくなってきた。


『では、このエキシビションマッチにも勝利した感想をお願いします!』

「か、感想ですか?」


 恥ずかしさで軽く頭の中がパニック状態の中、今回の戦いについての感想を求められてしまった。


「えっと、勝てて良かったと思います! あと、海が怖いので早く街に戻りたいです!」


 話していて、自分が嫌になった。

 ガキだと思われたくないのなら、もうちょっとちゃんとした感想を言わないといけないのに、出てきたのがそれだけだった。

 流石に勝てて良かっただけではまずいと思って、率直に大海原のど真ん中は落ち着かないことを言ったが、もの凄くバカっぽい感じになった。


『元気のいい感想でしたね! ありがとうございました! 今後の活躍にも注目していきたいと思います!』


 元気のいい感想とは、褒められているのかいないのかよく分からないが、ひとまずリアの参加した第0回イベントは終了した。


 落ち着かないバトルフィールドから戻ってくると、アミが待つ下層に再び戻ってきた。


「お疲れ様! 凄かったよ!」

「うん……。色々と苦戦した」

「く、苦戦した? 1回でも攻撃されてたっけ?」

「それはされてないんだけど、色々と攻撃が当たらなくて焦った……」

「ずっと攻めてるのに、焦るって言う感覚がよく分からない……」

「ちなみに紹介動画は流れてたの?」

「流れてたよ。リアも見たんじゃないの?」

「いや、あっち側では流れなくてさ。どんな感じだったの!?」

「えっと、なんかね……」


 リアの問いかけに、アミが顔を逸らしながら言葉を濁した。


「ああ、そういうこと……」

「うん……」


 リアからすれば、ガキだという取り上げられ方をしたのかと肩を落とした。

 しかし、アミはリアの今イベントでの暴れっぷりに、みんながドン引きしていたことを言いにくいと感じているだけである。

 大きな勘違いが起きているが、その話はそこで終わりになった。


「流石に11連戦もやると疲れちゃった。今日はもう終わろうかな」

「だよね。私も今日はもう終わろうかな」


 二人そろって今日はログアウトした。



「煙幕の真相、サイトの情報から分かるかなぁ……?」


 リアはログアウトした後、サイトで【煙幕】についての情報を早速調べてみた。

 盗賊職についてまとめられたゲームサイトをフリックしながら、有益な情報はないか探してみた。


「これかっ!」


 しばらく探していると、「【煙幕】の強化」という項目があった。

 さらに調べてみると、詳細が明らかになってきた。


「なになに、盗賊がレベル40以上になると、煙幕に追加効果をつけることが出来る……。その追加効果は、煙幕を重ね掛けすることで強化することが出来る……」


 調べてみた結果、【煙幕】でなぜ【ライトニング・チェイン】が効かなかったのか。

 盗賊はレベルが40以上になると、【煙幕】に追加効果が付けることが可能になるらしい。

 具体的には、煙の中に毒を混ぜて、振り払ってきた相手を毒状態に落としたり、熱を含んだ煙にすることで、氷や水属性の攻撃を弱める作用など、効果は様々。


「で、あのグザって言う対戦相手が使ってきたのは、砂煙も含んでいる煙幕だったってことか……」


 おそらくグザの使ってきた【煙幕】は砂煙を含んだもので、より1回の【煙幕】で命中率が大きく下がる上に、電気属性攻撃の威力が弱まるものであった。


「たぶん、命中率を大きく下げられるから採用したんだろうけど……。どっちにしても私にはすごく刺さってたなぁ……。実質、メテオ・ストライクも外したから、その目的にも合ってたわけだし」


 1回で大きく命中率が下がることに加えて、何度も重ね掛けをされていた。

 そのため、電気属性攻撃である【ライトニング・チェイン】が通用せず、【メテオ・ストライク】も簡単に回避されてしまったということだったようだ。


「レベル上限があったとはいえ、ちゃんとレベルを上げて先に得られる特技や能力習得も大事ってことかぁ……」


 装備の件も踏まえて、どんなに強い特技があっても準備不足だと、何が起きるか分からないということを、リアは強く感じた。


「まぁでもこれで、レベル40にしてあの人と同じ煙幕のスタイルにすれば、あのデカいガイコツを倒せる現実味が帯びてきたかな!」


 未だにユニークモンスターを倒したという情報は、どこにもない。

 あれだけ強いのだし、アミも倒せば何か強い装備や貴重なアイテムが手に入る可能性はあると言っていた。


「明日からはまたサクッとサハギンとか乱獲して、40にしてあのガイコツ倒すことを目標にしよっと!」


 またとんでもないことを明日から実行することを、リアは心に決めた。

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