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22話「対戦相手と紹介動画」

「あ、運営から連絡が来た」


 10分前になると、改めて運営から個別メッセージが届いた。

 エキシビションマッチの準備が整ったため、すぐにでも戦闘フィールドへの移動が可能だという旨だった。


「もうそんな時間かぁ。意外と魚釣りも楽しいね」

「楽しいんだけど、なんでアミばっかり釣れるのか、納得できないぞ……」

「だってリアったら、さっきからソワソワしすぎて魚がかかっても、全然釣り上げないんだもん」

「全く釣り竿から振動が伝わってこない……」

「さっきからリアの手が震えてるから、よく分からなかったのかな? 魚のかかり具合なら、リアの方が圧倒的に多かったと思うけど」

「またこの戦いが終わったら、改めて魚釣りしようかな……」

「え、もうエキシビションマッチでリアは死んじゃうの?」


 気分を紛らわせるためにやっていた魚釣りだったが、かなり楽しめた。

 リアルのように、餌をつけたりかかった魚を自分で外したりしなくていいので、手軽に魚釣りが楽しめる。


「じゃあ、そろそろフィールドに行っておこうかな。運営さんを不安にさせてもいけないし」

「そうだね、そうした方が良いと思う。私は、観戦用のスクリーンが表示される中層か上層で、リアの戦闘を見させてもらうよ~!」

「うん! じゃあ、行ってきます!」

「あい! 頑張って!」


 リアはアミの見送りを受けながら、運営に個別チャットを送って、エキシビションマッチが行われる戦闘フィールドにワープさせてもらった。


「ここがエキシビションマッチをするフィールドかぁ……」


 周りは見渡す限りの海。

 そこにポツンと円盤状のフィールドがあって、そこにリアは立っていた。

 海を眺めるには最高の場所だが、戦闘中に端の方に寄ってしまうと、海に落ち込んでしまうのではないかと不安になってしまう。


「私、泳げないんだよなぁ……」


 360度見渡しても、水平線だけが続いている。

 戦いに負けたとしても、海には落ちないようにしなくてはならない。


「とんでもないところにバトルフィールドを作ってくれたなぁ……」


 これなら、まだ10連勝をかけた戦いをしたコロシアムの方が、より雰囲気があると思うのだが。

 とにかく泳げないリアにとって、大海原のど真ん中に居るということが、落ち着かなくて仕方がない。


「随分とソワソワしてるなぁ、お嬢ちゃん」

「え?」


 コロシアムの端から、海を見下ろしてため息をついていると、後ろから声をかけられた。

 振り返ると、漆黒の衣服に身を纏った男がリアに声をかけてきた。


「エキシビションマッチの対戦相手の方ですか?」

「その通り。俺の名前はグザ。盗賊職として、今回のイベントを10連勝してエキシビションマッチにも参加したってわけだ。お嬢ちゃんも……10連勝したんだよな?」

「はい」

「……マジか。初期装備、だよな?」

「はい。買うの面倒だったし、お金は友達に全部あげちゃってるので」

「ど、どうやって勝ち上がってきたんだ……? まぁこれから戦うし、それもすぐに分かることか」


 見た目はとても恐ろしそうだが、こうして気さくに声をかけてきたことから、そんなに悪い人ではなさそうだ。


「君は中学生か?」

「……大学生なんですけど、やっぱりそういう風に見えますか?」

「い、いや! 随分と可愛らしいから!」


 何とか必死にグザはフォローしてきたが、全然フォローになっていない。

 やっぱり中学生に見えるということに、慣れているとはいえ、やっぱり凹んだ。

 そんな見た目が、これからの紹介動画とエキシビションマッチ中継で、嫌というほど流れるわけなのだから。


「あ~。またガキ扱いかぁ」

「だ、大丈夫だって!」


 エキシビションマッチを前にして、落ち込むリアを初対面ながらなだめるグザ。

 対戦するもの同士、試合開始まであまりにも緩すぎる時間が流れていた。




 一方、アミがいるレグルスタードの街では、巨大スクリーンが登場し、プレイヤーたちが再び盛り上がりつつあった。


『皆様、イベントお疲れ様でした! たくさん勝利できた人も出来なかった人も、次回のイベントから本格的な開催となりますので、今回の結果を基に更なるレベルアップに活かしていただければ幸いです! そしてこれより、エキシビションマッチを開催いたします!』


 エキシビションマッチが開催されるという一言に、一気にプレイヤーが湧きたつ。


『では、これから行われるエキシビションマッチでは、10連勝を達成した盗賊職のプレイヤー二人が、更なる勝利をかけて戦います。そこで、今回のイベントにおける二人の勝ちあがりを、こちらでご紹介していこうと思います!』


 巨大スクリーンに、パッと映像が付いて、プレイヤー紹介が始まっていく。


『安定感抜群! 盗賊特有の身軽さと、堅実な戦いぶりで大きく崩れることなく10連戦すべてを勝ち抜いてきました。レベル30制限の中でも、個人で培ってきた戦闘スキルが輝きます! その名はグザ!』


 まずは、リアの対戦相手であるグザについての紹介動画が流れていく。

 漆黒の衣服を纏い、誰よりも素早く動き出して、攻撃を仕掛けるよりも先に煙幕とDEXの高さを生かして攻撃を回避して、有利な状況になってから一方的に仕留めるという戦い方をしていた。

 盗賊で今回参加したプレイヤーは、とにかく攻撃に集中した者が多かったので、こういった堅実な戦い方はあまり見なかった。

 盗賊職のプレイヤーからは、思わず驚きの声が出ている。

 ただ、アミを含めた他職種のプレイヤーには、どれくらい凄いのかなどがよく分かっていない。


「あれがリアの対戦相手かぁ。もう見た目がアサシンみたい。それに動きも早いし、大丈夫かな……?」


 ヒーラーのアミからすれば、動きが速いこととスタイリッシュに攻撃できているだけで、ものすごく強く見える。

 見た目もなかなかの威圧感があるので、リアを送り出した立場としてちょっと不安になっている。


『その対戦相手は、幼き美少女!? 誰もが予想しない動きと圧倒的な攻撃力で、各プレイヤーを薙ぎ払って難なく10連勝! 初期装備だと思って油断することなかれ! その名はリア!』


「幼き美少女って……」


 リアはこれを見て、間違いなく怒っているのだろうなと感じながら、彼女の勝ち上がりのシーンを見た。

 そして、アミを含めた何万人という全プレイヤーが一斉に黙り込んだ。


 分身したり、青い稲妻を地面に走らせて対戦プレイヤーを一撃で消滅させたり、巨大な隕石を叩き落して、消し炭にしている映像が流れたからである。

 こればかりは、どんな立場のプレイヤーでも明らかに異常であることが、誰にでも分かってしまう。


「……不安になる必要ないね、これ」


 特技コピーと言っても、話を聞いていただけであって、最初の方の特技しかアミも見ていなかったために、【ライトニング・チェイン】を含めた大技は初めて見た。

 そのアミで普通にドン引きなのだから、他のプレイヤーは呆気に取られるしかない。

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― 新着の感想 ―
[一言] 熟練の実力者が相手だけどリアは大丈夫でしょうか? ちょっと抜けてる部分もありますから思わぬミスをしそうで心配です。……具体的には"鬼火"を使った後に"アイスマター"使って威力半減したのに気づ…
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