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20話「10連勝に向けて!」

 リアは順調に勝ち進み、8連勝まで到達した。


「これはもしかすると、10連勝行けるのではー!?」


 あと2勝というところまで来て、10連勝が少しずつ現実味が帯びてきている。

 主に【ライトニング・チェイン】を使用しながら、途中から【メテオ・ストライク】も気分で使いつつ、勝ち進んで行っている。

 しばらくすると、また戦闘フィールドが変わって、新しい対戦相手が出てくる。


「しょ、初期装備だと……!?」


 相変わらずリアの初期装備である姿に、相手は反応するのだが、だんだんと勝ち進むごとにバカにするような態度から、困惑の様子に変わっている。


 しかし、カウントダウンが始まって戦いの合図が鳴り響くと、戦闘モードになった。

 早速リアは、【ライトニング・チェイン】の準備を始めるのだが……。


「嘘っ!?」


 今までの対戦相手とは比べ物にならないスピードで、対戦相手の男がリアの元に飛び込んできた。

 そして、リアに容赦なく短剣の技を繰り出してきた。


「カオス・スラッシュ!」


 鋭く重い短剣の攻撃で、リアのHPは一気に残り1/4まで減らされてしまった。

 今までは、AGIがほぼ互角だったので、基本的なステータスはどのプレイヤーでも変わらないはず。

 考えられる要素として、リアは一つの考えが浮かんでいた。


「装備のセット効果で早くなってるとしか思えないな……」


 深緑色の装備を全身に付けていることから、各パーツ同じ装備シリーズで揃えていると、リアは思った。

 アミの装備のセット効果のように、ステータスを伸ばす効果があるのだろう。


「こっからはもっと慎重に戦っていくしかないね……!」


【ライトニング・チェイン】は、攻撃が発動するまでわずかに時間がかかる。

 今までは相手のAGIとほぼ変わらないお陰で、相手に攻撃される前に何とか攻撃できていたが、こうしてAGIを伸ばされると、僅かにかかる時間で、先手を打たれてしまう。

 次の相手からは、もう一度ちゃんとした戦い方をしていくべきだと思った。


 まさかリアが、今後のプランを考えているとは思っていない男プレイヤーは、苦悶の表情を浮かべているリアを見て、勝利を確信していた。


「勝ったつもりかもしれないけど、一撃で倒せないと無駄だよ。ライトニング・チェイン!!」


 勝利を確信して、笑顔を浮かべていた男プレイヤーに、いつものように電流を走らせた。

 その電流を喰らって、今までのプレイヤーのように消滅した。


「危なかったぁ……」


 流石に今までの連勝街道で、余裕を出しすぎていた。

 初期装備で、防御力など無いに等しいので、ちゃんとした武器と特技を使われると、かなり危ないかもしれない。


「ちゃんと装備、それなりでいいから揃えておくべきだったかぁ」


 これで9連勝になったわけだが、この後10戦目はこれまで以上の相手が出てくる。

 最低でも、さっき戦った相手レベル以上が来ると思って間違いない。


「うーん。アイスマター同様隠し玉のままにしておきたかったけど、ポイズンバレットの代わりに習得した特技、次から使おうかな……」


【イリュージョン・カウンター】は瞬時に分身が展開できるので、先ほどレベルのAGIで飛び込んできても、間に合うとは思う。

 しかし、万が一間に合わなかったときに、ピンチになる可能性がある。


「不屈の魂も、よく考えたら落とし穴があるから、あてに出来ないしね」


 イベントに向けて色々と考えた結果、不屈の魂は状況によっては頼りに出来ないのでは、という結論をリアは出していた。


「さっきみたいな大技で、即死ダメージを喰らって体力が1だけ残っても、それに合わせて毒とかになると、もうそこでおしまいだからなぁ……」


 どんなに強くても単純にダメージを与えるだけの特技なら、不屈の魂の効果は絶大な威力を発揮する。

 ただ、状態異常になった際に受けるダメージなどがあった場合、一気にその効果は意味のないものに変わってしまう。

 盗賊は短剣やブーメランなどと言った、属性攻撃を載せられる技が多いため、毒などになった時のことを考えると、まずいと言う考えに至った。


「結局、その考えに影響されて、バイトとかあったのに必死でプレイして、何か使える特技を探し回ったんだし、使わないともったいないか」


 一人であれこれ悩んでいると、また戦闘フィールドが変わって、10連勝をかけた最後の戦闘相手が出てきた。

 先ほどの相手同様に、深緑色の装備を全身に身にまとい、装備しているナイフが、光り輝いていて、より鋭そうに見える。


「……もう妥協してられない。やるしかない! ガラスの殺陣!」


 戦闘開始のゴングと共に、対戦プレイヤーが飛び込んでくる。

 その前にリアは、戦隊ヒーローのように自分の顔の前で腕を組むと、目の前に透明壁を作り出した。


「な、何だ……!?」


 不思議な光景に相手は戸惑いながらも、リアに向かって特技を繰り出した。

 しかし、その攻撃はリアに届くことはなく、透明な壁に阻まれた。

 カチンと音が鳴り響いた後、ガラスが割れたように粉々に砕け散った。


「よし、行けぇ!」


 そして、その粉々になった鋭い壁の破片たちが、相手プレイヤーに突き刺さった。


「な、何だこれは!? う、動けない……!」

「ごめんなさい。こっちも本気で10連勝目指してるので。メテオ・ストライク!」


 動けなくなった相手プレイヤーに、容赦なく隕石を叩き落した。

 隕石が直撃すると、相手プレイヤーは消滅し、勝利を知らせるログが届いた。


「やっぱり、強かった……! 苦労して取ったかいがあったぁ!」


 使った特技が無事成功し、リアはほっと一息ついた。

 リアは【ポイズン・バレット】の代わりに、【ガラスの殺陣】という特技を習得していた。




 習得したのは、数日前に遡る。


「うーん、良い特技ないかなぁ……」


 リアは、アイテム収集を繰り返しながら、色々とイベントに向けての特技について考えていた。

 正直なところ、さらに強力な【アイスマター】を習得出来たことから、もう攻撃技は要らないと感じていた。


「出来れば、イリュージョン・カウンター以外で自分の身を守れる特技とか、習得出来ないかなぁ……。でも、防御系でありつつ、こちらに何か攻撃もしてくるような特技じゃないとダメって言うのは、ハードルが高いなぁ……」


 そんなことを悩みながら、雪の洞窟を探索していた時だった。


「あ、あんなモンスターいたっけ……?」


 いつもと違う採取ルートを進んでいると、雪の洞窟に透明感のある水色の巨大なゴーレムが歩いていた。

【アイスゴーレム】と表示されており、周りにいないことから、ユニークモンスターだと確信した。


「なんかいい特技持ってて……!」


 いつものように戦闘を仕掛けた時だった。

【アイスゴーレム】が、何故か腕を掲げて、不思議な体勢を取っている。

 そして、透明な壁を作り出した。


「な、何あれ……。とりあえず攻撃しようか。メテオストライク!」


 いつものように、申し訳程度の攻撃をしたつもりだった。

 隕石が落ちると、ガラスが割れたような音が鳴り響いて、割れた壁の破片が飛び散った。

 そして、その破片が意志を持っているかのように、リアの体に突き刺さった。


「え、何これ!? う、動けない!」


 動けなくなったリアに、ゆっくりと【アイスゴーレム】が近付いてきた。

 全く【メテオ・ストライク】のダメージを喰らっている印象はなく、リアに傷一つ無いこぶしを下ろした。

 いつものようにダウンして、レグルスタードの街に戻ってきた。


「……私に必要なのは、あの特技だ!」


 リアは自分にとって必要な特技と確信し、そこから【アイスゴーレム】通いをひたすら続けた。

 今までのようにその特技を喰らって即ダウンではないので、コピー率が悪くなかなか成功しなかった。

 バイトが翌日に控える中、夜中まで特技習得を目指して、プレイを続けた。

 そして遂に……。


「やっと来たっ!」


 ―特技をコピーしました。

 ガラスの殺陣……透明な壁を作り出し、攻撃を受けた際に粉々に割れた破片が相手に突き刺さる。相手の攻撃・特技・呪文を一度だけ完全に無効化し、相手に微ダメージを与えつつ、行動一回分拘束する。



「あれだけ苦労したんだもん。使えなきゃ困るよね!」


 最後に習得した特技に助けてもらいながら、遂に10連勝に到達した。


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[一言] 殺陣ではなく盾ではないでしょうか?
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