12話「コピー能力の強化」
無事、アミにお勧めされた特技習得も完了し、ほっと息をついた二人。
そんな近くで、プレイヤーが騒いでいる。
「あっちにデカいガイコツが出たぞ!」
「あんなの強すぎて、絡まれた時点でやられるの確定じゃん……」
ちゃんとした装備をしたプレイヤー達が、足早に逃げていく。
「あー、ユニークモンスターが暴れてるのかな?」
「ユニークモンスター?」
「色んなエリアに、その場所に似合わぬレベルのモンスターが、いたりするの。それを、私は他のゲームの呼び方で、ユニークモンスターって言ってるんだけどね」
「そんなのがいるのか……」
自分がいた森などのエリアでは、そういうモンスターは見かけなかった。
進んでくると、そういう要素も増えてくるようだ。
「基本的には、エリア奥の外れとか決まったところに居るんだけど……。もしかしたら、絡まれたプレイヤーをどんどん追いかけてきて、こっちまで来てるかもね」
「そんなに強いの?」
「すごく強い。多分、最前線組が寄ってたかって戦っても、まだどうにもならないくらいのレベルじゃないかな?」
「じゃあ、まだ全然倒させる気がないってやつ?」
「おそらくね。倒せば何か特殊なアイテムとか、装備品とかは落としそうだけどね」
「……それを聞くと、倒してみたくなるなぁ」
「止めときなよー。やられるだけだって」
それなりにやっているアミの感覚でその強さなら、間違いなく敵わない。
倒すことは諦めるしかない。
「……ユニークモンスターだっけ? そいつ特有の特技とかあるのかな?」
「うん、あるよ。特技の威力とか、範囲とかが全然違うけど……って、まさか」
説明している途中で、アミはリアが何を考えているか理解したようだ。
「そのまさか、そのモンスターの特技をコピー出来たら、もうそれは凄いことになる」
「そ、そうかもしれないけど。コピー出来るの? 食らっても、耐えないといけないとか、そういう仕組みだったら、不毛だよ?」
「あ、そっか。確かに、それは考えてなかったな」
今までは、特技をコピーするには、モンスターから特技を受けて、その直後に覚えていた。
やられたことがなかったので、やられても特技コピーが成功する確率があるかどうかは、全くわかっていない。
ただ、ダメだとは説明文になかったので、試す価値はある。
「ちなみに力尽きたら、なんかペナルティとかあるの?」
「所持ゴールドが半分になっちゃうよ」
「おー、経験値が減るとかではないのね。なら、やってみようかな」
「ほ、本当にやるの? 力尽きてはここに戻ってを、繰り返すってこと?」
「そうだね。まぁアミが言ったとおり、駄目だったことを考えて、挑戦する回数を設けようかな」
指摘の通り、力尽きては習得することが出来ないといったことも考えられる。
今までのコピーするまでの戦闘回数がどれくらいだったかも考慮して、少し考えてみる。
「よし、ひとまず50回でダメだったら、諦めようかな」
「そ、そんなにやるの……?」
「ゴールドは、全部アミに渡しちゃえば、損がないしね〜♪」
「そういうことじゃないでしょうよ〜……」
アミは呆れ返っているが、リアとしてはプレイヤーの大半が、絶望するようなモンスターの特技が習得出来るかもしれないとなって、ワクワクしている。
「わ、私は街に戻るよ?」
「うん、もちろんそうして。あ、私のゴールドも持って帰っておいて〜」
「はーい」
アミがわざわざ残ってやられるメリットはなにもないので、ゴールドだけを預けて先に街へと帰ってもらった。
アミと別れて、逃げていくプレイヤーとは逆方向へと歩みを進めていく。
すると、プレイヤーよりも遥かに大きなガイコツが、周りのプレイヤーを追いかけ回している。
「取り敢えず、【ライトエレキスロー】で、こっちに注目を向けたほうがいいかな……」
ナイフを振りかぶって【ライトエレキスロー】を発動させる。
しかし、ガイコツにあった途端、カコーンとかわいた音が鳴って弾き飛ばされた。
「あらら……。見た目の割に、全くダメージが入らないのね……」
しかし、ターゲットをこちらに向けることに成功したようで、ゆっくりとリアに振り向いてきた。
ガイコツモンスターの名前は、【ジャイガンティック・スケルトン】と表示されている。
通常攻撃でも軽くやられることは想像がつくので、せめて特技でやられる必要がある。
「早速、この特技が活躍するときが来た! 【イリュージョン・カウンター】!」
自分自身の分身が、スケルトンの前に展開される。
スケルトンが所持している矛のような武器で、分身に攻撃してくる。
すると、爆発してダメージ入った。
「強い相手には、この爆発のダメージの方が効果的なのね」
ここまで4つのコピーした特技を使用してきたが、どれも消費MPなどが一切ない。
基本的に、一定間隔ですぐに発動させることができている。
「分身ハメで、逆に倒せるかも……!」
そんなことを思っていると、スケルトン矛を両手で持って、まるで神主がお祓いをするかのように、揺さぶり始めた。
すると、凄まじい電流を矛が帯びて、それをスケルトンが勢いよく地面に突き刺した。
「えっ!?」
電流が地面を走り、分身が一気に消し飛んだ。
リアにもその電流が襲いかかってきた。
そして、激しい振動がリアを襲い、目の前が真っ暗になってしまった。
しばらくすると視界が開けてきて、レグルスタードの街の入口に立っていた。
「やられたか……。あの電気技を食らうと、分身してても、確実にやられちゃうか」
通常攻撃が痛いだけなら、分身で何とかなりそうだが、あのように広範囲に威力を発揮する特技があるので、やはり倒すことは無理そうだ。
ただ、リアの目的はそこではない。
「まさか一回でコピー出来るわけ無いしなぁ……」
そもそもコピー出来るかも分からない上に、出来たとしてもなかなかに確率は低い。
そんな都合よく習得することが出来るわけない……。
「あ、あれ!?」
一応ログを遡ってみたところ、ある内容が目に飛び込んできた。
―羨望の閃きの追加効果を獲得しました。
羨望と嫉妬の執念……自分自身には無い優れた能力に対する羨望と嫉妬の心により、発動する。コピー対象による特技によって力つきた場合、コピー成功率が飛躍的に上昇する。
「なんかコピー能力が強化されてる……!」
―特技をコピーしました。
ライトニング・チェイン……所持している武器に雷の力を付与し、地面に電流を走らせる。電気属性攻撃。150〜220ダメージを複数の相手に与える。ダメージ数は、レベルが上がると増加する。
「コピー出来てるし、何より強すぎる……!」
リアの今の体力を考えると、最低でも150ダメージが出るのは、明らかに異常。
それも、複数の相手へ一気にダメージを与えることが出来る。
「これ見たら、なんて思うんだろうなぁ……」
街へと必死に戻っているであろうアミを、ワクワクしながら待つリアであった。




