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9話「コピー特技、お披露目!」

 再び森へと戻ってきたリアは、アイテム盗みでお世話になっているモンスター達と、再び顔を合わせた。


「ここで確認出来たモンスターの特技は、蜂の毒針攻撃と、あの牙ちゃんの引っかきと噛みつきの連続攻撃、あとは気持ち悪いワームの粘液ぐらい?」


 正直、ビールビーの毒攻撃ぐらいにしか、関心が向かない。

 ブレスなどがコピーできない以上、ワームの粘液攻撃もコピー出来無さそう。

 というか、仮に出来るとしても、コピーしたいとは全く思わないので、対象外である。

 サブナックの連続攻撃は、そこまで強くない上に、これも人がやるとちょっと……という印象を受けた。


「取り敢えず、蜂の毒攻撃だけコピー頑張ってみようかな」


 レアドロップである毒腺付きの毒針を狙いつつ、特技コピーも狙う。

 アイテムのために乱獲しすぎて、リアのレベルが上がっているので、軽く攻撃しただけで倒してしまう。


「うーん。盗みが成功するまでに、特技を一回でも使ってくれると助かるんだけど……」


 もちろんモンスターによって、特技の使用頻度などは異なってくる。

 今のところ、スライムなどを含めてなかなか特技を使ってくれない。

 もう少し先に進んで、モンスターが強くなってくると、使用頻度が上がるのかもしれないが。


 普通に戦うなら、特技を使ってこないほうが助かるのだが、今回ばかりは使ってくれないと困る。

 こんな状況を求めているのは、おそらくは全プレイヤーの中で、リアだけだろう。

 しばらく、特技コピーのために毒攻撃を何発も受け続けた。

 もちろん毒状態になり、痛くはないがビリビリと継続して振動が伝わってくる。


「アイテム盗みに終わりはないけど、特技は一度コピーしちゃえば終わりだからね!」


 やっている体感では、なかなかにコピー成功率は渋く感じる。

 ただ、一度でも成功すれば終わりというだけで、随分とヌルいとリアは感じている。

 盗みを成功させて、特技を一回は繰り出すまでは棒立ち、その後倒すという作業を繰り返す。

 その異様な光景に、アイディールマンを討伐するために通っていく新規プレイヤー達は、不思議そうに見つめながら通っていった。



「ふぅ、やっとバイト終わったよぉ」

「お疲れ様。これに懲りたなら、お金の使い方には気をつけな?」

「って言っても、限定キャラとか出るとね〜」


 数時間後。

 リアは初期村で、アミと合流した。

 バイトで随分とくたびれているようだが、ゲームにしっかりとログインしているので、特に問題なさそうだ。


「で、特技コピーはどうなの?」

「ひとまずは、2つコピーしてみたよ」

「おお! 出来たんだ!? どのモンスターの特技をゲットしたの?」

「スライムと、森にいた蜂のモンスター」

「ってことは、体当たりと毒攻撃?」

「そうそう。まぁ話すよりも、見せたほうが早いかもしれないね」

「うん、普通に見てみたいかも。誰もこんな事、出来てないだろうし」


 早速、リアはアミを連れて村を出て、その辺を徘徊しているスライムで特技を発動させることにした。


「じゃあ、まずはスライムの特技である……。【バウンス・ストライク】!」

「え!?」


 飛び上がって、スライムに体当たり。

 勢いよく吹き飛んで、スライムは砕け散った。


「どうよ!?」

「どうよも何も……。そんなに跳ね上がって豪快に体当りするの!?」

「なかなかの爽快感よ!」

「だ、だろうね……。すっごく派手だし。想像以上の見た目で、普通と違うって分かるレベルだった」

「そして、もう一つあるんだよなぁ……」


 次のスライムに、バッと手をかざす。


「【ポイズン・バレット】!」


 リアの手から、紫色の毒針で発射される。

 その毒針を食らったスライムは、その場でダウンした。


「すご……。なんかもう超能力みたいに見える」


 ポイズン・バレット……毒針の嵐を展開して、相手に突き刺す。通常攻撃と同様のダメージ数だが、高確率で毒状態にする。なお、攻撃対象が毒耐性100%、あるいは毒を使用する魔物など一部の相手には、毒状態に出来ない。


「コピーをするまでに、結構時間がかかるって感じはあったね」

「それで、2つしかコピー出来なかったの?」

「いや……。なんかしっくりくる技がなかった」

「まぁ初期モンスターに、有用な特技を求めるって言うわけにはいかないもんね」

「ということで、次の街に進んでみようと思います!」

「本当!? やっとその気になってくれたんだね!」

「有用な特技を探すには、進むしかないとみた」


 結局、アイディールマンのレアドロップは回収せずじまいだが、今は特技コピーのほうが気になる。

 先に進んで、もっと覚えたら面白そうな特技を探してみたいとリアは思っている。


「じゃあ次の街、レグルスタードに行こうか!」

「うん。どんな街なの?」

「このゲームの中で、一番大きな街だよ。全部の施設があるし、ギルド募集とか野良パーティ募集とか、フレンド募集とか、活発的だよ〜」

「ここでこんだけプレイヤーごった返してるんだから、相当なものなんじゃないの?」

「正直、チャット飛び交いすぎて何がどうなってるか、分からないレベルではあるかな」


 大体想像がつくが、ゲームが盛り上がっているのはいい事。

 それも、自分がまだ誰も知らない未知の領域を開拓しているので、なおさらワクワク感がある。


「じゃあ、行こう! 道のりは分かってるから」

「あ、ちょっと待って。その前に忘れそうだから、もう盗んだアイテム全部あげる」


 リアは出発前に、アミに今まで盗んできたアイテムをすべて渡した。

 とんでもない勢いで、リアの道具袋からアミの道具袋へとアイテムが流れていく。


「も、もうなんか驚かないわ……」

「全部売却して、装備なりに使ってね〜」

「ちょ、貯金してここぞというときに使うね」


 アミがこの光景に引いていることになど、気にもしないリアだった。


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― 新着の感想 ―
[良い点] 面白くて読み始めました [気になる点] いくら友人と言えど、レートの高いアイテムを全て譲るのは如何なものかと⋯。 当然、ガチ勢じゃないし面倒だから全部あげる!と言う主人公の気持ちというのは…
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