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メニューを描きます

「日程は明後日になりそう」


 スマホを見ていた舞花が言った。


 二人とも出かけてるのに返信早いな。


「というわけでどんなの食べるか決めて、買い出し行かないとだね」


「だな」


「まずメニュー作ろ」


 小学生が使いそうな12色色鉛筆を出した舞花。


 そしてそれで絵を描き始める。


「絵でメニュー作るんかい」


「うん、なんか描きたくなった」


「なるほどな。で、早速描き始めたそれは……」


「肉」


 はい。確かに肉に見えなくもないね。


 ただの赤いアメーバ型だけど。


「秀映なんか食べたいのある?」


「そうだな、肉も欲しいけど、海鮮系もいいなって思った」


「いいね。じゃあエビとかホタテとか描こ」


 舞花がやたら多くのエビとかホタテとかあと魚とか描き始める。


 水族館みたいな絵になってるけど、よく見たら肉の塊が泳いでるのでバーベキューのメニューだとわかる。


「あとはお野菜も必要だねー」


 野菜を書き足していく舞花。


 玉ねぎに目がついてるし、どんどんと舞花の世界観が表れている。


「玉ねぎに目がついてるのに涙出てないのすごいな」


「細かいところに突っ込むなあ……他なんか食べたいものある?」


 玉ねぎに涙の雫を描き足しながら舞花が訊く。


「うーん。最後に鉄板使って焼きそば作りたい」


「おおー。楽しそう」


 舞花が焼きそばの絵を描き始める。


 焼きそばには流石に目はついていなかった。


「できた! メニューができたので、これを写真部のグループにあげます」


 舞花がメニューの写真を撮り、送信。


 すぐにメニューの可愛さを称賛するスタンプが十個くらい届いた。


 花記が九個、部長が一つ。


「よし、秀映。食材を手に入れにいくよ」


「よし行こう」


 僕と舞花は駅前のスーパーと商店街があるところに向かうことにした。




 歩いたってそんなに時間はかからないけど、とにかく暑すぎるということで、バスに乗ることにした。


 小学生なら全区間百円のバスも、高校生だと普通にちゃんとした運賃がかかるので、バスに乗るハードルは昔とあまり変わらない。


 そのハードルをことごとくなぎ倒す暑さ、おそろしすぎる。


 舞花と並んで席に座っていると、走り出してすぐに舞花は僕に寄りかかって、寝てしまった。なんだか僕も少し舞花に寄りかかりたくなる。ちょっとだけ、身体を傾けてみた。


 すごくよく寝ている。追試と補講が終わってそのあとメニューを描きまくっていたから、疲れちゃったかもな。


 そんなふうに思って舞花の顔を見ると、なんだか少しだけ笑っていて、さっきのメニューの世界を見てそうだった。


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