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エピソード12 癒し

「ぼりぽりさくさくさくさく」


 舞花がさっきからずっと口にクッキーを入れている。


 リスの広場のお土産で買った、りすクッキーだ。どんなクッキーかといえば、丸い大きめのクッキーに、リスの絵が描いてある。絵は多分全部で五種類くらいあって、全部タイワンリスの絵なようだ。


「あっ、結構こぼれてんな」


 僕は、舞花の周りのクッキーの小さな破片を集めて捨てる。ちょっとお母さんみたいなことをしてる気分。それか舞花お嬢様のお手伝いさんかもしれん。


「ご、ごめん」


 舞花がクッキーを食べるのをやめて言った。


「いや大丈夫。僕もちょっと食べるわ」


 



 今日も今日とて暇ではある。


 写真は、おっこれは撮りたい、と思うから撮るもんで、今日は何枚撮んなきゃなってなるのはよくない。


 だから部室でのんびりしたい時はしててもいいと思うし、それはサボりではないと信じるタイプの考え方だ。


「そういえば、部室にも癒しが欲しいな」


 僕は部室を見回した。


 椅子と机とパソコン以外にはそんなにものはない。


 なんか癒しがない。


 癒し系の写真でも壁に貼りまくるか?


「秀映、リスに癒されすぎて贅沢を求めるようになっちゃったんだねー。私じゃ……だめなの?」


 舞花が可愛くリスっぽいポーズをする。たっぷり本物と触れ合っただけあって、なかなかリアルだ。舞花がリスになったら、ひまわりの種に埋もれてはしゃぎながらめっちゃ食べてそう。


「あ、もちろん舞花でもいいんだけど、なんというか、ちょっとジャンルが違うじゃん。小さい系の癒しがないというか」


「それはつまり、私が小さくないってことか……た、確かに私今もクッキー食べたしちょっと太りつつあるけど、まだそこまでじゃないもん!」


「いやどんなに小さくなろうと思っても、リスほどにはなれないでしょ」


「そーいうもんだいではない。まあでも確かに部室を小さい系可愛さあふれる場所にするのは賛成だよ。なんか猫のぬいぐるみでも並べる?」


「ぬいぐるみいいな。買いに行くか」


「どこに?」


「ぬいぐるみ部に」


「ぬいぐるみ部? この学校そんな部活あるの?」


「あるよ。ちなみに写真部に比べたら人数的にも予算的にも潤ってるからね」


「そうなの⁈ まあ写真部は規模小さめだもんね〜あっ、その規模の小ささ自体が癒しっていうのはどう?」


「うーん」


「はい、よくないね。ぬいぐるみ買いに行こう」


 こうして舞花と僕は部室を出て、ぬいぐるみ部のある隣の部室棟へと向かった。


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