エピソード10 肉まん
ある日、公園に写真を撮りに来た僕と舞花は、困っていた。
「公園に、重機がたくさん……」
「工事中だったな」
「どうしよう、他のところ行く?」
「そうするか」
この公園は結構色々と面白い写真が撮れるからよく来ていたわけだけど、これを機に新しい場所を開拓してもいいかも。
「どこにしようね」
「それ」
「あ、ありがちそうな雑な方法で決めよっか。私が方角決めるから、秀映は距離決めて。一キロ以内」
「なるほど、いいよ」
「じゃあ……南東で」
「800メートルで」
「さてどんな場所になったかな?」
舞花が地図アプリで調べると……
「お! ちゃんと良さげなのある!」
「何があるの?」
「肉まん屋さん!」
「あ、そうかい」
写真に良さげっていうより、舞花的に良さげだった系ね。
まあ肉まんの写真も、美味しそうに撮る工夫を凝らすという点でやりがいがあるかも。
それに、肉まんを食べてる舞花、どう考えても可愛いので、それ写真に撮るだけで、神写真のできあがりな予感。
肉まん屋さんにつくと、驚いたことに人が並んでいた。
台湾の方が開いているお店みたいで、かなりこだわった肉まんっぽい。それゆえに人気。
舞花は特に迷うことなく普通の肉まんを3個買った。
匂いからしてもう美味しそうすぎるので、僕も3個入りそうだな。
というわけで僕も3個買った。
「肉がジューシーすぎる! ああ、肉まんがなくなるのは悲しいけど、全部超ジューシーなうちに食べたい気持ちもある。というわけでどんどん食べよ」
「早いなペースが」
舞花、食欲すごい時しかない。
まあ今は夕方だし、今日は早弁したので、僕も結構あるけどね、食欲。
「さて、舞花と肉まんの写真……撮れないわもう」
三つ目をもぐもぐしてもう口の中に全部あるところだった。
仕方がないので口が膨らんだ舞花を撮る。
可愛い。
適度な食いしん坊さが出ていて、遠慮のないのびのびとした舞花の写真だ。
「肉まんの写真、秀映のそのあと一つ残ってるやつで撮ってもいい?」
三つ目もお腹にお行きになったようで、舞花が写真モードになった。
「もちろんいいよ」
僕は肉まんを手に持って、舞花が写真を撮りやすいようにした。
「……よし、撮れたっと、うん、美味しそうな写真。こういう写真もっと撮りたいな。この辺りの食べ物写真集でも作ろっかな」
「いいんじゃない? 文化祭で展示したら受けそう」
「お! 部活動として、堂々と買い食いしまくれる方法発見!」
舞花が本当にすごいことを発見したテンションで言うので、僕はなんか控えめに笑ってしまった。




