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エピソード6 インタビュー未遂

「あら、秀映くん」


 道を歩いていたら、高級車が止まって窓が開いた。


 菜々だった。


「あ、菜々さんこんにちは」


「どこかに行く途中?」


「あ、はい、写真部の買い出しに駅前まで。じゃんけんで負けたので」


「あらかわいそう。乗っていきなさい」


 なんか超かっこいい運転手さん(マネージャーさん?)に何やら話し始める菜々。


 え、え、僕乗っていいんですかね?


 ☆    ◯    ☆


 めっちゃ乗り心地いい。


 やべー。


 駅前まで歩くのと快適さが違う。


「乗せていただいてありがとうございます」


「どういたしまして……って私が言ってもしょうがないんだけどね。運転してるの私じゃなくてマネージャーさんだから」


「秀映くん、か。菜々の彼氏かと思ってびっくりしたよ」


 マネージャーさんが朗らかにそう言うと、菜々がすかさず、


「妹の舞花の彼氏なんです」


「おお! なるほどつまりは、舞花ちゃんがだんだん離れって行って寂しいっていう菜々の話につながるわけだ」


「う、私そんな話……し、してないと思われます!」


「はは。そうだっかな。ごめんなさい」


 そんな会話を訊きながら外を眺める。


「……ごめんね。車だと、ふとした時に写真撮りにくいわよね」


「いえ、大丈夫です。別に常に写真撮っているわけではないので」


 僕がそう言うと菜々も窓の外を見て、


「舞花はどう? なんか勉強ついていけてるかだいぶ怪しい気がするけど」


「うーん。まあ、力尽きてましたけど補習受けてはいたので、そんな留年とかはないと思います。あと……いえ、そんなもんですかね」


「留年しなさそうならいいけどね」


 ちょっと安心したっぽい菜々。


 ……現代文の成績はめっちゃいいんですよ。さすが小説書いてる人ですね! と言おうとしたけどやめた。


 やめたというか、舞花、小説書いてること菜々に言ってたのかなって。


 まあそれはいいや。


 駅まで車だと数分くらいだからもうすぐ着くし。


「北口のロータリーで大丈夫かな?」


「はい。本当にありがとうございます」


 車は右に曲がり、ロータリーに入った。そして静かに、ほぼ衝撃なしに止まる。


「秀映くん。またね」


「はい。ありがとうございました」


 車がロータリーを回って、大通りに出て行く。


 さてと、買うものメモ……を車の中に忘れたあああああ!


 やばい! と思っていると、舞花からメッセージが。


『お姉ちゃんからの写真の転送です。どうしてお姉ちゃんがこれを持っているのかについて詳しくインタビューしたいなと思ったりしています』


 と書いてある後に、買うものメモの写真が。


 こ、こわすぎ。


 いやただ送ってもらっただけでね、そんな舞花が心配してるような勝手に菜々と二人でデートに行くみたいなことはしてないよ。


 まあその辺りはちゃんと菜々が説明してるだろうから、舞花も冗談混じりにこんな文面で送ってきているだけだろうね。


 

 いや、でももしかして、菜々が冗談で、秀映くんとデートしてた〜とか言って、それを舞花が信じ込んだ可能性もあるのか?


 それは怖すぎる。


 


 というわけでびくびくしながら買うものを買って部室に戻ったら、舞花に、


「え、なんかすごい控えめな雰囲気になってるけど、どうしたの?」


 と言われた。


 やっぱり舞花のメッセージが冗談だったか。よかった〜。


 まだ舞花が本気で怒ったことは多分なくて、だから見知らぬものの怖さを実感していた一時間ちょっとだった。


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