九回裏の、続きへ
野球の試合は賑やかだった。
すごいなあ、そんなに張り切って応援したら体力もたないんじゃない?
って思うのに、みんなすごい応援している。
攻撃と守りの入れ替わりの時に、ペンギンのキャラクターが出てきた。
「可愛い」
「お、早速舞花も可愛さを体感してしまったか。ちなみにもしかしたら勘違いしてるかもだから言っておくと、あれはペンギンじゃなくてつばめね」
「あ、そうなんだね。まあ確かにそうか」
うーんでも、普通にペンギンだと思うでしょ。
あ、だけどよく見たらしっぽが二つあるからつばめかな。
それからも試合は続き、八回が終わった時点で、スコアは5対5。
そして九回表は点が入らず、九回裏。つばめ側にワンアウト2塁のチャンスがやってきて、球場は盛り上がりまくっていた。
代打がコールされる。
だんだん野球のルールの基礎はわかってきた。
「すごい歓声だね」
「そりゃ、もうチャンスだし、代打で出るのが、伝説を何度も作ってるベテランだからな。トリプルスリーを五回も達成してるし。うん、やばい」
「あれ、それってもしかして……秀映が構えを真似してた人?」
私は秀映に訊きつつ考えた。トリプルスリーってなんだろう? まあなんかすごいことだっていうのはわかったけど。
「ま、まあそうだな。ほんと、昔は憧れてた」
「そっか」
私はグラウンドを眺めた。
秀映は、ここに立ちたかったんだよね。
こんなこっち側というか、観客側から見るのは、どんな気持ちなんだろう。
少し、悔しいのかな。
それとももうそんなの昔の話だし、秀映はきっと今の仕事が好きなはずだから、悔しくはないのかな。
なんとなく、私は後者であるような気がした。
昔、まだ私と秀映が付き合い出したばかりの頃。
秀映は言ってくれたよね。
「……舞花。あの、いつか、舞花も僕もさ、悔しくなくなったらさ……」
あの続きって、なんだろう。
うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!
と急にうるさくなった。
サヨナラタイムリーヒット?
であってるのかな?
を打ったっぽい。
打った人は、なんかかけられている。
結構いい試合だったのかな。
すごい参考になった。
秀映もこれは興奮してるよね……と、思って隣を見ると。
秀映は確かに興奮してたけど。
なんか、少し緊張していた。
なんだろう。
秀映が緊張する理由って。
わからないけど、なぜか私も、つられて緊張してきた。
お読みいただきありがとございます。
次話が最終話です。




