映画にきた
貴重な写真展での経験から少し日が経って。
だんだんともう夏という時期になった。
そんな暑い週末。
舞花と僕は、映画を見に来ていた。
大きなショッピングモールの6階にある映画館。
6階へと続くエスカレーターを、舞花と僕は上っていた。
うん。辺りの気温が完璧だ。
こういう場所にいると、涼しく過ごせるのが一番だと思ってしまう。
「今日見る映画、めっちゃ恋愛ものじゃん」
「そうだね」
二人で事前に何を見るか決めたんだけど、舞花も僕も、なんとなく恋愛ものがいいなということになった。今結構ヒットしている実写映画らしいし、菜々も出てくる。
菜々はこの映画ではそこまで出番が多いわけではないみたいだけど。
「恋愛ものの映画ってカップルが見に来ることが多いのかな」
僕はふと思った。
「どうなんだろう。そんなこともないんじゃない?」
「そうか、あんま関係ないかな」
ま、今のはわりとくだらない会話だ。
ちょうどエスカレーターの終わりまできた。
6階にたどり着いた僕はすぐに売店を確認。
そんなに並んでない。
そしてもちろん、舞花は売店に目が行っていた。
「あのー、別に私、食いしん坊ってわけじゃないんだけどね」
「その前置きはいらないよ、ポップコーン買おう」
「うん!」
やっぱり映画はポップコーンと飲み物くらいはあった方がいいかもと僕も思う。
まあ、物語の内容に夢中になると、何も摂取しない人になるんだけどね。
「味はバターしょうゆが一番好きなんだよねー。秀映は?」
「僕はどうしようかな。半分ずつにしたい?」
「したい」
「だったら……これにしようかな。わさび」
「えー。絶対それやばいって」
「やっぱりそうかな? じゃあ、キャラメルで」
「落差激しい」
まあでも、マイナーポップコーンチャレンジをしに来たわけじゃないし、無難なキャラメルとバターしょうゆでいいんじゃないですか。
というわけで、その二つと一番小さいサイズのドリンクを買って、食べ物面の準備は整った。
場内に入ると、もう結構な人が座っていた。
「こんなに埋まってるのに、よく真ん中らへんの席とれたね」
「確かに。事前購入って言っても、前日だったもんな」
真ん中の少し左より。
通路が近いので、出入りしやすいのも大変良い。
スクリーンもそこそこ見やすい。
映画を見る頻度もそんなに高くなくて、あまりどこの席がいいのかわかっていない僕たちが選んだにしては、よさげな席である。
結構時間ギリギリだったのもあり、なにやらほかの映画の宣伝みたいなのが流れていた。
これが結構長いんじゃなかったけな。
激しいアクション映画らしきものの宣伝が終わり、ちょうど人気アニメの劇場版の宣伝がはじまった。
「お」
舞花が小さく反応する。
「これも割と気になってたもんな」
「うん」
「また今度見に来るか」
「そーだね」
まだ明るい場内で、ぼちぼち会話をしたり、ポップコーンを半分に分ける作業をしたりしながら、舞花と僕は映画が始まるのを待った。




