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おしゃべり

「二人は付き合ってるんだね。若いなあ」


 少し話すと佳波さん(本名は波佳さんらしい)は年下に話す口調に変化した。


「私も一応付き合ってる彼氏と写真撮ってるんだけどね。まだ今日来ないのよ。なんか寝坊したとか言って。だらしなすぎねほんと」


 舞花と僕は笑ってうなずいた。愛想笑いとかじゃなくて、普通に話してて楽しい。


 コミュニケーションがうまい人の話にのっかると普通に話が進む。すばらしい。


「わたしも高校生くらいの頃振り返っちゃうとさ、あれだよ。ちょうどコロナが流行ってた時期でね。文化祭が中止になったのよ」


「ああ……」


「だから、高校生活のありがたみを感じたりしててね、うん。だからめちゃくちゃ青春しようって話。私はもう就活で忙しくてやばいの~」


「就活……大変そうですね。でもそんな中あの頻度でいい写真投稿できるのがすごいです」


 佳波さんがあげている写真を思い出しながら、僕は言った。


 確か毎日二、三枚は日常的かつクオリティの高いものをあげてたはず。


「まあ、逆に日々の生活であれくらいはいい写真がないと、もう人生全部が悲しくなっちゃう気がするというか……ま、好きってことね。撮るのが」


「情熱がこもってますね」


 舞花が佳波さんを見つめて言い、そして佳波さんたちが撮った写真を見上げた。


「こもってる? うわあ、自然とそうなってたのかな、うれしい~……っていうか、今更だけど、舞花ちゃん、めっちゃ可愛いね! あれだな、虹原菜々に似てる!」


 悪気のない、でも、球界最速レベルの言葉が投げられた。


「あっ。私実は妹なんです」


「えええええ! 虹原菜々の?」


「そうです」


「うわあ。まじ? すご。どうすごいかって生き生きしてるのがすごいわ」


「え?」


「いやだってさ、頑張れば一日一回はネットかテレビか街の広告で見る菜々が身近にいたらぜったい色々疲れるし縮んじゃうでしょ。それなのに、私はこうだっ! って感じで生きられてそうですごいなあって。まじめな気持ちとして」


 佳波さんは感心してうなずきまくる。


 いややっぱりなかなかすごい人だ。普通だったら菜々の妹であるという事実自体に驚いたり反応したりすると思うけど、そっち方向に行かなかった。


 いつも感性豊かな写真を撮ってるだけある。


 それに、舞花も。いつのまにか堂々としている。


 ゴールデンウィークごろに、花記に虹原菜々と間違えられかけた時は、結構暗い気持ちになっていたのが分かった。


 でも今はそんなことない。


 舞花と佳波さんは、可愛いっていう話からファッションの話に広がり、なにやら知らない用語を使いこなして盛り上がっている。


 僕は、そんな二人の会話に入れずにいたけど、入らなくていいや、と思えた。


 それはもちろん話したくなくなったわけではなく。


 本当に生き生きとしたおしゃべりだったからである。


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