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夜の電話

「なるほど、そんなことがあって勉強頑張りすぎて寝落ちしてたのね」


「そう。急に頑張ってもろくなことにならないってわかった」


「うんうん、まぁね〜」


「舞花はなんで夜に電話くれたの? まさか僕を起こすためではないよね」


「だって今日、全く話してないから。これは大変! となった」


「なったのか」


 まあ確かに舞花の声を聞かずに終えた日ってあんまりない。


 だから話したくなるのは僕も同じかな。


「というわけで今日食べたケーキの話してもいい?」


「もちろん聞きたい」


「ケーキの食べ放題だったの。で、やっと最近少し話すようになったお友達たちと行ったんだけど、もう全種類食べるのは無理なくらい色々あって……あう」


「どうした、椅子から落ちたとか?」


「……トイレ行ってくる。あの、正真正銘の、食べすぎによる腹痛が先ほどから」


「うわ、どんまい。いくらでも好きな時に話そう。お腹落ちついたらとか」


「はい……」


 あんなに食べる舞花が食べ過ぎになるってどんぐらいだったんだろう。やっぱり無限にケーキが食べたくなるような場所だったんだろうなあ。


 ☆   ○   ☆


「だいぶ良くなった」


「おつかれ」


「つかれた。あ、それでね……」


 舞花の話を聞いていると、友達と楽しめてるんだなってわかった。


 そんな友達との日々って、あんまり経験してない僕が言ってもあれだけど、後々まで詳細に残ることじゃないのに、なぜかぼんやりとは残る記憶になるんだと思う。


 というかすでにぼんやりとしてるし、舞花の話。


「それで……そのあと買い物に……」


 眠いかな。


 もう日付が変わるまですぐな頃。


 わかる眠い。

 

 基本全国の中高生は寝不足なのだ。だいたい一限が早い。


 電話の向こうできっと見せている、いや誰にも見せていない舞花の寝顔を想像する。


 寝顔は本当に小学生みたいな雰囲気なんだよな、舞花。


 ほっぺに何かが当たってるならなおさら。


「……とっても安心したいの。秀映に抱きついていい?」


「ん?」


 ね、寝言かな……舞花の夢の中の世界での、舞花の台詞……。


「うんしょ……それでね……最近見つかった新種のキノボリカンガルーがね」


 話変わったのかなこれは。っていうか夢の中でどんなマイナーな生物出してきてんだよ。


「強く抱きしめすぎてたりしない……? 私はちょうどいいよ」


 あ、夢の中ではもう抱きついてるのね。


 キノボリカンガルーのことはよくわからんけど、まあ幸せそう。


 いつもより甘えてる度が高い舞花の声を聞きながらキノボリカンガルーについて調べてみる、のんびりとした深夜だった。


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