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時間をかけた帰り道

「ほんとに動物が飛び出してるように見えるよ~」


 通りがかった優しいお父さんに写真を撮ってもらって、舞花も僕も写っている写真が撮れた。


 そんな写真を満足さいっぱいに眺める舞花。


 そしてその後、舞花と僕は巨大脱出ゲームに行った。


 個人戦ではなく協力型のゲームで、僕と舞花は二人用のやつに参加。


 暗号を解くような頭を使うものもあれば、サーチライトに照らされないようによけまくって疲れるようなものもあった。さらにはもぐらたたきのようなので一定のスコアを出さないと開かない扉があったりした。


 舞花と僕は息が合っていて、うまくできるように誘導してくれている優しい仕様だったのもあったけど、全部クリアできた。


「やった! ほら秀映、なんか賞状でてきたよ」


 舞花が機械から出てきた賞状を両手で受け取る。


 個人的には中三とか高一って、遊びに夢中な時は小学生くらいの気分になれるものだと思っていて、今ちょうどそんな感じだなと僕は思った。




 ほどよい達成感の余韻に包まれながら、舞花と僕は売店と出口の方に向かった。


 売店でお菓子と記念の限定ボールペンを買い、出口をくぐる。


 まあもっといてもよかったかもしれないけど、結構満喫したし、のんびりと各駅停車にでも乗って座って帰ることにした。


 まだ日は出まくっているけど、時間から判断するなら夕方になりかけたころ。


 強いけど高さは低くなってきた光が電車の中に入ってきて、舞花の寝顔を美しくしていた。


 手からグミの袋が滑り落ちそうなので、僕はそっと支える。


 でも僕もやっぱり疲れてて眠くなってきた。


 グミの袋を舞花と自分の太ももの間に置き、落ちそうにないことを確認した僕は、明るさを感じながらも目を閉じた。




 そして次に目が覚めると、窓からの景色は薄暗くなっていた。


 あれ? 思ったよりも早く日が沈んでない?


 いや違った。


 これ……僕たちが思ったより長い間電車に乗ってるんだわ。


 寝過ごしました!


「舞花~起きよう」


「え? あれ暗いね」


「そう乗り過ごした」


「えええええっ!」


「今何駅らへんなの?」


「わかんない……えーとね」


 僕は電車のドア上のモニターを見て、電車の位置を把握。


 どうやら今のところ10駅ほど乗り過ごしているようだ。


 あともう一つの問題として、この電車、急行になってる。


 どうやら途中までは各駅停車だったけど、ある駅以降は急行になるタイプの電車だったようだ。


「次止まる駅までもまだ10分くらいあるな。多分そこで降りれば12駅乗り過ごしたことになる」


「うわー。起きれなくてごめん」


「いや、僕がほんとごめん」


 謝りつつも僕たちは笑っていた。


 なんかこういうミスもいいじゃんって思える。


 だってこういうのも、どっちかっていうとプラスな思い出だ。


 絶対一人だったらただ絶望してただけだけど。


 好きな人と座っているだけでそんな風に思えるのは、なんだか素敵で。


 気づけば二人で、窓からちょっとずつ見え始めている星々を眺めていた。


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