真剣勝負
そしてそれから十分後。
「お」
「やっと倒れたわ」
双方ガータのオンパレードだった中、やっと僕が八ピン倒した。
というかほんとに二人ともガータだけじゃん。
スコア表にGが並びまくるのすごいよね。
「私も、次は倒す!」
めっちゃ倒すのが難しい敵みたいにピンを扱う舞花は、ボールを持って投球の準備をした。
そしてかなり力強く転がした。
お! かなりまっすぐ行ってる!
からーん。
あ、全部倒れた。
「え? これをストライクって言うんだよね?」
「そうだよ、おめでとう」
「え、すごい! 感動! え? これ毎回できたら私プロボウラーになれるの?」
めっちゃはしゃいでいるよ舞花。
床すべすべだから滑らないようにね。
舞花は初ピン倒しが初ストライクだったのをきっかけとして、どんどんスコアを伸ばしていった。
バッティングもそうだったけど、舞花は早い段階で感覚をつかむのがうまいな。
僕もなんとか感覚を思い出してそこそこ倒せるようになったけど、今のところ接戦である。
「ふっ、スペアだった」
舞花がこちらをカッコつけて振り返った。
「うそ? あんなに二ピンが離れてたのに?」
「そう。どや顔しそう」
「もうしてる」
マジか。
勝つためには僕はストライクを目指して投げるしかない。
いや毎回ストライク目指して投げてるけどねそりゃあ。
「がんばれー」
舞花の大して応援していない声が聞こえる。
よし、そんな舞花を呆然とさせて見せよう。
僕は丁寧に、先頭のピンのやや右側を狙って投げた。
よしよしよし。いい軌道。
そして……全部完璧に倒れた。
「やったストライク!」
「あーあ、無邪気に喜んで。初心者に優しくないなあ……」
「な、なんだよ真剣勝負にするって言ったじゃん」
「うん言った」
でも負けるってなると悔しいみたいだ。
ま、怖がってる僕を舞花は堪能したわけだし、悔しがってる舞花を僕が堪能することにしよう。
「これ終わったら、もう一ゲームやろう。勝てる気がする」
「わかったいいよ」
僕は笑った。舞花の負けず嫌いモード、初めて見た。
☆ ○ ☆
「勝ったー!」
「よかったな」
「すごく素直に喜んじゃってる〜」
一ゲーム目は最終的にはそこそこ差がついて僕の勝ちだったけど、二ゲーム目は僅差で負けた。
ちなみに手加減とかそんなしてない。
そして舞花は、初心者にしては高い120くらいのスコアが印刷された紙を鞄にしまって、
「てなわけで、プール行こう」
まだまだ元気が余ってるという感じで、そう言った。




