ボウリングが下手
バッティングセンターで体を動かした後にやってきたのは、ボウリング場。
「バットが意外と重くて、ボウリングする前にすでに腕が痛い……」
舞花が自分の腕を揉む。なんかいい具合にほぐされてそうな舞花の二の腕。
「ま、ボウリングもゆるく行こう」
「いや、私初めてだから、ゆるく行ったら本当に1ピンも倒せる気がしない」
「確かに最初はめっちゃむずく感じるかも。でもすぐ慣れると思う」
確か僕が初めてボウリングをしたのは、少年野球チームでのクリスマス会だったか。
あの時は確か10連続ガータくらいした気がする。
でもそこからは少しは倒せるようになった。しかし今も割と下手。
「まずはシューズとボールだな」
自分の足のサイズのボタンを押して、するとちゃんとそのサイズの靴が出て来る。これすごいよね。
その後はボール。
僕は肘を痛めてるのもあり、重さは9ポンドのやつにした。かなり軽い方だと思う。
舞花も、とりあえず軽い方がいいということで9ポンドにしていた。
「よし、じゃあ、『まいか』の番だな」
登録ニックネームは「まいか」と「しゅーえい」に舞花がしてくれた。
「え、もう転がしていいの?」
「うん。バーも上がってるし大丈夫」
「よし……いくよ」
舞花はバッティングセンターの時の一振り目とは対照的に、かなり慎重に転がした。
最初はすごくまっすぐ行っていたが、少しずつまがっていき、ガータ。
「うう。まがるのは想定外」
「ゆっくり投げるほどまがりやすくなる気がするな。あんまりわかんないけど」
「そうなの? もう少し勢いよくやってみようかな」
そう言って二投目に臨む舞花だったが、今度は手を放す段階でミスり、ガータにあっという間にはまってしまった。
「む、むずかしい!」
「わかる」
「秀映見本見せて」
「見本? いや僕うまくないそんな」
「でも1ピンは倒せるでしょ」
「いや実際久々なのでそれも怪しいが……」
なんというレベルの低いレーンが誕生してしまったのだろうか。
いや、ほんと1ピンは倒すぞ。
腕をレーンと平行に丁寧に引き、腕をおろしてなるべく自然に球を離す。
「よし……じゃない全然」
普通に左に逸れて、ぎりガータだった。
ま、まあ二投目は大丈夫でしょ。
今度は球の軌跡を曲げる作戦にした。
右手だけではなく左手もボールに触れ、両手で回転をかけながら投げる。
あんまり右ひじに重さがかからないし、これの方が楽。
というわけで今回はちゃんと倒れるよね?
僕はボールを見送るが……倒れませんでした。まじかよ。
「決めた」
後ろで舞花が楽しそうに僕の残した10本のピンを見つめていた。
「どうしたの?」
「秀映と私の、真剣勝負にしよう。このゲーム」
「あはい」
どうやら一瞬で僕が下手だとばれてしまったようだ。そりゃそうだな。
「すぐ慣れると思う」とか言ってた人、いくら久々とはいえ全然慣れた様子が見られないじゃんかよ。




