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バッティングセンター

 それから、舞花と僕は、ジェットコースターに比べたら平和なアトラクションたちに乗った。巨大ウォータースライダーみたいなのとか、大きく振り子のように揺れる船とか。


「つぎはどこに行く?」


「うーん。あっ。あれやってみたい」


 舞花が指をさしたのはアトラクション群の隣にあるバッティングセンター。


 もともとプランにはなかったけどそんなプランに縛られても意味ないし。


 やってみるか。


 そう思って僕がうなずこうとしたときに、舞花がしまったという顔で、


「やっぱり、他のがいいかな」


 そう言った。


「いややろうよ、バッティング。僕も全くバット振れないとかなんてことは全然ないから」


「……無神経でごめん」


「いや久々にバット振りたいから、ナイスな提案。ていうかそもそも僕が野球ができなくなったのは自分のせいだし」


「ううん。それはない」


 さっき振り子のように揺れていた船くらい首を振る舞花。


 そんな舞花に本当に久々に野球したいんだよって言って、三回目くらいで信じてもらえた。


  ☆    ○    ☆


 バッティングセンターに到着。アトラクション群よりはだいぶ空いていた。


「球速が選べるの?」


「そう」


「一番遅いのでも70キロもあるの? 早くない?」


「まあ最初は難しいかもしれないけど、当てようと思えば当てられると思うよ」


「ほんと? ボール当たったら痛そう」


「機械が投げるから暴投はしないって。120キロのジェットコースターの方が数百倍は怖いわ」


「よっぽどジェットコースター怖かったんだね」


「うん。よし、じゃあスタートボタン押すよ」


「はい」


 舞花がヘルメットを被り、打席に立った。


 一球目が投げられた。


「ふぅん!」


 すごい大きな、空振りだった。


「めっちゃ豪快に振るな」


「気合い入れてる」


「でも大振りしない方が当てやすいから、まずは当てたいなら小さく振った方がいいかも」


「あ、そうなの?」


 そうして舞花は二球目に狙いを定めて、


「ふっ」


 かっ。


 ボールが右方向に飛んで行った。


「当たった!」


「二球目から当たるなんていい感じだな」


「若干もっと早めにふればいいのかな……ふんんっ」


 カーン。


 ボールは直線的に飛んで「HIT」の的に当たった。


「やった!」


「すごいな、タイミングが合いまくってたわ」


 才能ありそう。少年野球時代空振りの達人だった僕からしたら、三球目からそんないい当たりを飛ばせるのはほんとすごい。


 それからも、半分ぐらいの球を舞花は前に飛ばしていた。


「楽しい。打つといい音するね」


「そうだよな。それが楽しいんだよ。次、僕やってもいい?」


「もちろん」


 僕は舞花からバットを受け取った。そして球速を変更して、ボタンを押す。


 まあ、最初はやっぱり、90キロだよな。90キロっていうのは、少年野球のピッチャーくらいのスピード。

 

 きっとこれで、少年野球時代のころの感覚になれるはず。


 今はあのころとは違うことをする毎日だけど。


 あの頃の全力さを、少し身体が思い出すかもしれない。

 

 僕はバットを構えた。


「あれその構え、テレビで見たことある」


「これはね、つばめのチームの一番の構え」


「へえ」


 一球目が投じられた。


 僕は当てに行かず思いっきり振った。


 すると芯に当たり、的には当たらなかったけど、向こうのネットまで飛んだ。


「すごい!」


「今のはマジで激レアだと思っといて」


 僕は二球目に備えた。


 二球目はバットの下の方に当たって弱いゴロ。


 それからも一回目ほどのあたりはなかった。


 けどそれでも、久々にバットにボールを当てることができて、その衝撃は、しばらくの間は残る気がした。


 

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