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観覧車からのジェットコースター

「一番てっぺんまで来たな」


「ほんとだ。両隣のゴンドラの方が若干低い」


 そうすると、舞花と僕といるところは、高さ百メートル以上ってことだ。


 すごい。


 スカイツリーの六分の一の高さだけど、この辺りでは圧倒的に高いので、何も気にならない。


 円形に回っているので、高さの変化は段々と遅くなってここまで来た。


 だからさっきに比べてすごい見晴らしが良くなったなんてことはないけど、一番高い位置からの景色を忘れないように、シャッターを切った。




 降りる時は降りる時で、先ほどとは真下に位置するものが若干違うので、少し違う景色の変化を楽しめた。


 そうして地上までやってくる。


 舞花と僕はゆっくりと動いたままのゴンドラから動かない地面に降り立った。


「はー、色々と楽しい景色だった」


「うん」


「次はどこいく?」


「そうだなあ」


 あたりを見回せば観覧車に乗る前よりも人は増えていて、どのアトラクションにも長かれ短かれ列ができていた。


 でもまだ一番長い列も待ちくたびれるほどではなさそうだし、乗りたいのに乗るのがいいのかな。


「舞花は何か乗ってみたいのある?」


「これかな」


「最速時速百二十キロのジェットコースター?」


「うん。速くて楽しそう」


「そうだね……」


「あれもしかして秀映苦手? ならやめとこう」


「いやチャレンジしてみるわ」


「大丈夫?」


「大丈夫。乗ろう乗ろう」


 まあ、そんな百二十キロなんて、野球ボールの速さくらいだよな。大丈夫だよね?


 

 と言いつつも、さっきの観覧車と違って、列が早く進んで欲しいとは素直に思えなかった。


 どうせ乗るのにね。


「秀映、緊張してる。ちょっと怖がりで可愛いね」


「ま、まあな」


 もはや何も返す余裕がない。


 次の次くらいで順番が回ってくるだろう。


 一番前はやだ。頼む。


 


 よかった。


 真ん中くらいだった。


 舞花と僕は隣に座り、そしてバーが降りてくる。


「しゅっぱーつ! 楽しんできてください!」


 明るいお姉さんの声を合図に、動き始めた……。


 そして登り始めた……。


 いや高い高い。


 観覧車より高いでしょこれ。


 と思って横を見れば観覧車より全然高くなかった。


 ま、そうだよな、大丈夫だよ……な?


 あ、落ちた。


 僕は目を瞑った。


 隣で舞花が高い声をあげている中、僕は三分くらいの修行だと思って耐えた。 


 そして気づいたら、出発したところと同じところにいた。


「おかえりー! また来てね!」


 お姉さんがそう言うとすぐに、レバーが上がる。


 舞花が元気にジェットコースターから降りる。


 僕も頑張って降りる。


「あー、楽しかった。もう一回くらい乗りたいくらいだね……あれ?」


「……」


「秀映、手震えてるよ! ごめん。やっぱり苦手だったのね」


「いや、とってもたのしかったです」


「うそ! うそよくない。ほら手握ってあげるから……とまれ!」


 舞花に手を握られたらそりゃあ止まるよ。


 実際止まった。


「怖がりさん秀映、私の中ではすごい好きだなあ」


「それはよかった」


「怖がってるの見るの意外と楽しい。もう一回……のる?」


「いや、ほら列もさっきよりも長いし、やめとこう」


「はいはい、やめときましょうねえ」


 舞花はにやにや笑って歩き出した。


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