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しりとりと歌

「ルリシジミ」


「ミント」


「とんかつ」


「つの」


「のりまき」


「さっき言わなかった?」


「さっき言ったのは巻きずしだよ」


「あそうだっけ。あそんな気がする」


 僕と舞花は、歩いている間が暇すぎるので、しりとりをしていた。


 まるで小学生の登下校のようだ。


 まあ朝三時台に登校する小学生がいたらびっくりするけどな。


「キャラメル」


「また、る、か……あ、ルリタテハ」


「蝶の名前に詳しいと、るから始める言葉が増えるね」


「だな。だけどそろそろやばいかも」


「はんこ」


「鯉」


「イカ」


「カ…カブトムシ」


「ん?」


「い、いや……カブトガニ」


「よろしい」


 何かを許可していただきました。


「そういや日の出って何時だっけ」


「四時半」


「うわお。ちゃんと海につくかな」


「若干怪しい」


「ちょっとペースアップするか」


「うん、はいじゃあ、ニラ」


「いや……しりとりのじゃなくて歩くペースね」


「あ……ごめん。話の流れが読めない私でした」


 薄暗い空間の向こうで舞花が笑う。


 橋が大きくなっていた。


 川も太くなっていた。


 そして、少し、街並みも工場っぽくなってきて。


 もっと行けば、海なんだなあって思う。


 こういう冒険している感? のようなもの。


 小学生の時に体験した量を10としたら、中学生で2、高校生になってからはほぼゼロだった。


 だからなんだかテンションが上がってくる。


「あー、同じ三時半に起きてるっていう状況でも、アニメ見まくってるのと今だと違うなあ」


 舞花がつぶやいた。


「でもアニメもいいよな」


「それはそうね」


「そんな舞花に問題。この歌は何のオープニングでしょう。いきます、~♪、~♪」


「ごめん……音痴すぎてわかんない」


「泣きそう」


「今度一緒にカラオケ行こうよ。練習しよう歌の」


「それは、いいかもしれないけど、ほんと音痴なんだな僕……」


「秀映落ち込んでるし、おもしろ」


 なんで面白いっていう感想になったんだよ。


 まあいい。


 僕は悲しいので、小さい鼻歌で続きを歌った。


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