ステーキ
舞花だって、相当頭を使って疲れていたのだろう。
アイスを食べる途中で、スプーンをもって寝そうになっていた。
僕は時計を見た。
もうすぐ夜の七時だ。おやつを食べている僕たちだけど、そろそろ夕飯の時間だ。
「……ん、あ、秀映」
「おつかれさま。今日めっちゃ勉強したもんな。今日はここまでで十分だと思うよ」
「う、んそうだね。あ、そうだ、夕飯食べていく?」
「いやいや、夕飯までは申し訳ないから、これで帰るよ」
「あ、でもね、どうせ一人だし今日。寂しいから、一緒に食べない?」
「そうか。なら……いただいていきます」
そういえば、今この家にはどうやら舞花以外はいないようだ。
忙しいのかな、やっぱり菜々は。舞花の両親がどんな仕事をしているのかは知らないけど、両親も忙しいのかもしれない。
「秀映、ステーキでいい?」
「ステーキ? いやそんなすごいのじゃなくて、もうカップ麺とか与えて。僕には」
「でもステーキ肉さっき冷蔵庫見たらあったんだよね」
「それ僕食べる権利ないやつだよ」
「そんなことないよ。大丈夫だって。多分誰かがてきとうに買ってきただけだし」
「ステーキ肉っててきとうに買う物なの……?」
「うん、そうでしょたぶん。とにかく大丈夫。というわけで私が作るね。私料理ができるタイプの引きこもりだったので」
「あ……わ、わかった。僕手伝うからこき使って」
「こき使いはしないけどちょっと手伝ってもらうかも」
「うん」
いや大丈夫かな……。
舞花の料理の腕はめっちゃ信頼してるけど、そんな絶対ランクがすごそうなお肉を消費していいのだろうかと心配だ。
そんな僕を気にせずに舞花が部屋を出ていくので、僕も舞花の後について行った。
しかしもうそんな心配をしてもしょうがない。
なぜなら、もう、立派なステーキが二枚、焼きあがってしまったからである。
「えーとたしか、パンはここにあるから……うん、あ、秀映スープの加熱止めて」
「はい」
こうして、パンとスープも用意でき、晩ごはんセットが完成してしまった。
「いただきまーす」
「ほんといただきます……」
「申し訳なさそうにしないでおいしそうにして」
「おお、もうここまで来たらそうするか」
「そうだよ」
僕はステーキを切って、口に運んでみた。
あ、やわらか。
いい肉をほとんど食べたことがないのに、いい肉だと分かる。
「おいしい、ちょうどいいくらい柔らかいな」
「ね。結構いい感じに焼けてる」
確かにちょうどいい焼き加減だ。
焼き加減は舞花に全部お任せしてしまったんだけど、なんかステーキには焼き加減に名前がついてた気がする。
まあそんなの忘れたし使ったことないんだけどな。
「秀映、そういえば」
「はいそういえばなんでしょう」
「秀映と、見たいものがあって。今度朝会いたいな」
「朝か。いいよ。なんか風景の写真?」
「まあそんな感じ。朝の……三時くらい集合で」
「さん? ぐご」
びっくりして貴重なお肉が口から飛び出るところだった。危ない。




