ベッドとアイス
舞花の勉強に対する集中力はすごかった。
もう三時間ほどぶっ続けでやってて、どちらかというと僕の方が疲れが表に出ていた。
「秀映、ここは過去形でいいの?」
「えーと、いいはず。うん、これは時制の一致だね」
「だんだんわかってきた」
「いい感じだな。あ、でも疲れたりはしてない?」
「そう言われると……いつのまにか疲れてる」
「休憩するか」
「うん」
舞花はくるっと椅子を回転させて、そしてベッドに一直線に行って綺麗に飛び込んだ。
「秀映もきていいよ」
「あー、ありがと」
僕は舞花に言われてベッドの方に行った。
舞花のベッドってだけで普通に緊張するので、めっちゃ角の近くに座った。
それでもすごいふかふかだった。
やはり高級ベッドか。
「秀映、なんか食べる? ずっと教えてくれてたから、お礼になんか美味しいもの持ってくるね」
「え、ほんと? やった」
実際お腹が空いていることに不意打ちで気づいてしまい、遠慮なくそう言ってしまった。
舞花が扉を開けて下の階に降りていく。
僕は一人で、大きな舞花のベッドの端に残された。
広いベッドに余っている空間がたくさん。
飛び込みたい気持ちになるよな。
まああれだな。
これが人間の自然な感覚なんだろう。
僕はそんな正直な気持ちを行動に移そうとしたけど……。
いやいやいや。
人のベッドに勝手に飛び込んで大の字になるのはよくないよ。
「ん? 秀映なんか葛藤してる?」
舞花が戻ってきてすぐ僕を見て言った。
「あ、いや」
「寝そべってごろごろしていいよ。ていうか後で一緒にごろごろしようよ。あ、でもその前におやつね」
「考えてることが透けてたか」
「まあね〜、あ、それでね、大きいアイス持ってきた」
「でかいなあ」
「一緒に食べようかなって思って」
なるほど。
大きな箱のアイスを彼女の部屋で二人で食べるなんて、素晴らしい度合いの幸せさだ。
幸せすぎて、まだアイスには早いとかいうツッコミも生まれようがない。
しかも今日は実際暑いのだ。
梅雨どきの晴れ。高い湿度とともに感じさせてくる暑さ。
普通にアイスの需要がありまくりな日だった。
「はい、スプーン」
「ありがと」
僕たちは好きなようにアイスをすくって食べた。
「つめたい」
「だな」
勉強してるとなんか頭の辺りが熱くなってくる気がするけど、それが一瞬で冷えた。
それがすごい気持ちいい……。




