水色の蝶の思い出
そしてそれから、僕と舞花の蝶を探す日々が始まった。
まさか、写真部をやめたのに、毎日写真漬けになるなんて。
色々人生あるもんだな、と気楽に考えながら、美少女の隣でにやにやしてしまっている僕だった。
そんな日常が半月ほど過ぎて。
ゴールデンウィークがやってきた。
僕と舞花は、少し遠出をして、大きめの公園に来ていた。
そこで僕は舞花に訊いてみた。
「どうして、蝶が好きなの?」
舞花は話しだした。
「昔、ほんとに昔、私が唯一仲がよかったって言える友達がいて」
「おお」
「その人と一緒に、遊んでたら言われたんです。なんだか舞花ちゃんって、蝶みたいだねって」
「たしかに……そんな雰囲気がある気もする……?」
「え、ほんとですか? なら先輩も仲がいい友達認定してあげます」
「え、してくれてなかったのかよ」
「先輩はしてるんですか?」
「してたわ、というか毎日のようにここ半月出かけてるじゃん一緒に」
「たしかに、ていうかあれ、私ここ半月くらいほぼ毎日外に出てるんですか? すごい」
「そうだな、すごい」
僕はうなずいた。
今日はゴールデンウィークだからやっぱ人が多い。
僕と舞花だって大多数のうちの一人で、まあ側から見たら友達だか釣り合ってないカップルだかよくわからない二人組にでも見えてるんだろう。
いやそれ以前になんとも思われてないな。
「それで話を戻すとです、その昔先輩以外に唯一友達と言えた人がいて、その人に蝶みたいと言われました」
「うん」
「その時友達が指差していたんです、頭上の水色の蝶を」
「水色の蝶って……あの僕が写真に撮った……」
「あれに似ていたとと思います」
「なるほど、それで……」
「あの時のお友達とはもう疎遠なんです。顔も忘れかけています。でも、きっとあの蝶の写真を載せたなら、きっと出会えるかなって」
「たしかにちゃんと撮れれば五万いいねくらい行きそうだな」
「もっと行きたいです」
「まじかよ」
「そのためには、先輩のアカウントが既に蝶の綺麗な写真をあげる素晴らしいアカウントとして認知されている必要があります。コツコツ普通にいる蝶の写真を撮るのも大事だと思います」
「なるほどなあ。僕のアカウントから投稿するわけね」
「ダメですか? 先輩はアカウントのフォロワーが増えていって、水色の蝶がきちんと撮れた日には、すごく有名になるかもしれません。お願いします。これからも、協力してほしいです」
「うん、するよ。でもさ、どっちかっていうと有名になりたいから協力するってより、舞花と写真を撮るのが楽しいからするってことで」
僕が素直な気持ちを言うと、舞花は驚いた目を向けた。
「あ、なんか僕ミスった?」
「あ、いえ……先輩は、変わってますねって思いまして」
「そうかな?」
「そんな気がします」
舞花は俯いて花を見ながらてくてく先に行きはじめた。
僕も蝶がいないか確認しながら、歩きだした。
そんな時、ふと思い出した。
確か舞花のお姉さんは、人気女優さんだったな、と。
お読みいただきありがとうございます。
次話は舞花視点の予定です。
ここまで読んでくださった方、ブックマークしてくださった方、本当にありがとうございます。




