表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
38/110

ぬいぐるみは、おそろい


 それからも舞花と僕は、創られた海の世界を一緒に歩いて。


 そうして、その世界の端までやってきた。


 いやただの出口なんですが。


 出口を右に行くとすぐ、お土産屋さんを発見。


 結構たくさん人が入っていて、舞花と僕もとりあえず入ってみた。


「秀映、何か買う?」


「せっかくだから買うか」


「うん。なんか可愛いものだらけ」


 舞花の言う通り、海の生き物のぬいぐるみや文房具、アクセサリーなどいろいろなものが売っていて、可愛い系が全体的に多かった。


 舞花はその中でもぬいぐるみに興味があるみたいで、てくてくぬいぐるみコーナーを巡回し始めた。


 普通の水族館ならば、イルカのぬいぐるみとか、アザラシのぬいぐるみとか、サメのぬいぐるみとかが多いのかもしれない。


 けど、ここはイルカも大きなサメも、アザラシもいない、なんだかんだでこじんまりとした水族館だ。


 そういうこともあってか、カクレクマノミとか、イソギンチャクとか、チンアナゴとか、ハリセンボン(柔らかそうな素材)とかのぬいぐるみが並んでいた。


 舞花が一つのぬいぐるみを手に取った。


「それ、なんのぬいぐるみ?」


「ダンゴウオの赤ちゃん、だって」


「そういえばいたなあ。そんな見た目の魚」


 ていうか、水槽には種名書いてないのに、ぬいぐるみのタグには何のぬいぐるみか書いてあるんだな。


 お土産コーナーで、さっき見た魚が何だったかわかるというのは新しい。


「これ、いいな。なんかまんまるくて」


「うん」


 水槽で見たダンゴウオの赤ちゃんは、丸くて、ちょこんと海藻にくっついていた。


 そんなところを再現してなのか、マグネットになっているものもあった。


 けど、舞花が持っているのはキーホルダーで。


 たまに鞄につけている人がいる、毛が生えてもふっとした球状の物体みたいなノリのものっぽい。


「それ、一緒に買おうよ」


「うんそうしたい」


 舞花はうなずいた。


 おそろいのぬいぐるみ。なんかいいな。


 そんなふうに思っていると、舞花が続けた。


「学校の鞄につけようかな。ぼっちで寂しくてもこれ触ってると、秀映と少しはつながってる気がするし」


「そうだな。まあそういう使い方もあるかもしれないけど」


 ……舞花、やっぱり、結構緊張してるよな。


 そりゃあそうだよな。


 久々に学校に行ったら、周りはどんな人だか不安だし、色々とどんな立場に自分がなるのかなどの不安もあるし、勉強も置いて行かれてそうで怖いし。


 だから僕は自分の分のダンゴウオのぬいぐるみを一つとって、言った。


「僕、明日これずっと握ってるよ。まあちょっと風変わりなおまじないみたいなもんだけど」


「ありがと」


 舞花はそう言って、さっきに比べれば安心して緩んだ表情になった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ