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初めての放課後

 いつものような放課後だ。


 僕は帰宅部と同時刻に校門をくぐり、そして舞花との待ち合わせ場所に行った。


「舞花、こんにち、は」


「先輩、こんにち、は」


 あれおかしいな……付き合い始めたのにぎこちなくなってるけど。


 いやおかしくないのだ。


 要はお互いが、めっちゃ意識してしまっているということだ。


「あ、あの」


「うん」


「まず、先輩のことをちゃんと名前で呼ぶことにしてもいいですか?」


「うん」


 そうだな。僕たちは一緒に飛んでいくことにしたんだから、「先」輩じゃ、あんまりしっくりこない。


「……秀映、ですよね」


「です」


「知ってました」


「うん。あ、そうだ、あと丁寧語ももうなくしていいと思う」


「ですかね」


「うん」


「じゃ……秀映、今日はどこに行く?」


 う、うおおおお。なんか距離が縮まった感じする!


 名前呼びと丁寧語じゃなくすだけで。


「秀映。どうしたの?」


「いやごめん。いちいち感動してるだけだから気にしないで」


「そう、ならいいけど」


 舞花は笑った。


 なんか、これで本当によりいっそう、隣に舞花がいるんだなって思える。


 いや……どうしようね、かわいいよ。


「あ、それで今日は、どこ行くかだけど……」


「私は、どこでもいいよ。もう蝶の写真を撮らなくちゃいけないわけではないし」


「そっか。じゃあ……どうすればいいんだ?」


 これはかなりの失態! 彼女との過ごし方がわからない!


「とりあえず、駅の方行く?」


「そうしましょう、はい。ぽんこつでごめん」


「ううん。一緒なだけで、いいんだから」


「それは僕もだけど」


 いやあ。そう言い合えるのって幸せ……! とか言ってる場合じゃない。


 まじで彼氏としての役目を果たせてる度がゼロなんですけど。




「そういえば……菜々と話、したの?」


 脳内で何をしようか考えながら話題を振る。


「したした。なんかお手紙に沿っていろいろと」


「そうか。よかった」


「なんか、ほんとに色々話しちゃった。自分らしさの話とか、あとは、お互い大好きだよって話とか」


「うん」


「あ、あと最後に、言われたんだけど」


「おお」


「秀映と、え、えっちなことは、まだしてはいけませんと」


 舞花が隣でそう言いながら、顔を一瞬で赤くした。


「う、うんそうだな。その通りだな。教育的なお姉ちゃんでよかったな」


「そう、だね」


 僕たちはうなずき合い、そしてこういう時に限って、僕は舞花の胸に視線が行ってしまったりするのだ。


 いや、いい加減今日のプラン考えましょうよ。僕の情けない脳細胞たち。


4章スタートです!

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