告白 飛んでいく蝶
ひとしきりエアキャッチボールをすると、花記が立ち上がった。
「じゃ、私は行くね。秀映は一番話したい人と話しておいで。その子、もう昔の友達とは話し終わったみたいだから」
「おお」
僕は、グラウンドから立ち去っていく花記を、マウンドの位置から見送った。
そして、スマホを取り出し、舞花に連絡してみる。
『今、どこにいる?』
『先輩のところに私が行きます。先輩は、何処にいますか?』
『僕は、市民グラウンドだけど』
『わかりました。待っててください』
僕も舞花のところへと駆けていきたかったが、待っててくださいと言われているのに、またどこかに行ってしまうとすれ違ってしまうかもと思い、僕はその場で舞花に何を言おうか考えていた。
☆ 〇 ☆
「先輩!」
「舞花」
ほとんど時間がたった気がしなかった。
僕は、もうさすがに舞花のところへと走り出した。
「舞花。ごめんわざわざ」
「わざわざじゃないです。私、一番一緒にいたい人のところに来ただけなので」
「……」
「私、気付いてしまったんです。私は……」
グラウンドの端で、僕と舞花は向かいあっていた。
だんだんと晴れてきてはいるけど、まだ定義的には曇りかもしれない。
そんな中、目の前の女の子は、どうしてか明るくて、どうしてか可愛くて、だからどうしてか……少し、抱きしめたくなってしまうのだ。
舞花が続きを声にした。
「私は、虹原舞花っていう、一人の男の子に恋をしてしまった、小さな女の子です」
「……」
「先輩、私……先輩が大好きです!」
それは、舞花の、一番はっきりとした宣言だった。
だから僕はワンテンポの間、固まっちゃって。
でも、次の瞬間には、ちゃんと声に出せた。
「僕も、舞花が、大好き」
その言葉と同時に、舞花が僕に飛び込んだ。
いや、僕も勝手に、舞花に飛び込んでしまっていた。
どうしてなのかはわかんないけど。
人はたまに、勝手に大胆な行動をする。
そんな時、大体は後悔するものだけど。
今はどう考えたって、後悔などするわけもなく。
最大限に近くで嬉しそうに笑っていて、またほんの少し僕の肩を濡らしてしまっている舞花と、いつまでもこのままがいいな、と本気で思っているのだ。
☆ 〇 ☆
これは、蝶が海を渡る壮大な物語でも、光輝く幻の蝶の話でもない。ましてやバタフライエフェクトなんか、絶対に起こらない。
ただ、どこかの国の小さな街で、ちょっと低めを飛んでいた「二人」が出会って、一緒に飛んでいくことにしただけの話。
ここまでお読みいただきありがとうございます!
ここでひと段落しますが、付き合い始めてからのラブコメもどんどん描いていきます!




