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幼馴染から電話

 菜々は僕に写真を返した後、何やらメモ帳にペンを持って向かい始めた。


「舞花に言わなくちゃいけないことをまとめてるの。私、台詞に気持ちを込めるのは得意だけど、台詞を考えるのはそんなに上手くないのよね」


 そう言うと、僕を見て、少し申し訳なさそうに菜々は笑った。


「舞花、探しに行ってきます。お邪魔しました」


 僕はそう言い残して菜々の家を出た。


 といっても家がでかいので、言い残してから出るまでに結構あったんだけど。


 


 さて、どこに舞花はいるのだろうか。


 まずはどっちに行ったのだろうか。


 こういう時にすぐに走り出せるタイプのラノベ主人公は、尊敬に値するな。


 と、その時、スマホから電話音がした。


 舞花に電話番号教えたっけ。


 いや、SNSの通話機能か。


 そう考えながら、画面を見ると、


 花記からだった。


 予想外……。


 でも僕は電話に出た。


「もしもし」


『あ、もしもし秀映? 舞花ちゃんはね、今昔のお友達と話してるから、私と話して待ってよ』


「ええ……」


 ていうかどういうこと? 舞花の昔の友達……きっと悪魔のアゲハチョウを一緒に見た友達と、花記は知り合いだったのか?

 

 まあ知り合いなんだろうな。


『秀映、ごめん』


「え?」


『写真部……しつこく誘って……ごめん』


「いや、それは大丈夫」


 野球ができなくて無気力になった僕が写真を好きになれたのは、花記のおかげだ。


 花記は、手術の時からずっと僕の心配をしてくれてて。


 だから、写真をやめてまた無気力になってしまったら嫌だと思ってくれていたんだろう。


 それはわかっているから。


「今、どこにいる?」


 花記と話すために、僕は居場所を訊いた。




 花記がいる場所は、市民グラウンドだった。


 懐かしい。


 特に雨上がりのグラウンドって、なんだか心が落ち着くなあとか、昔よく考えていた。


 ぱっと見誰もいないそんなグラウンド。


 でも、グラウンドの隅。野球をする時はホームベースを置くところ。


 そこに、僕の幼馴染が立っていた。


 僕はホームベースにはいかず、ゆっくりと花記とは少し離れたところまで歩いた。


 そしてそこに立って、花記を見る。


 花記が僕に気づいた。


 そしてその場にしゃがんで僕に言う。


「ど真ん中、ストレート」


「おっけ」


 僕はまるで本当にボールを持っているように構えて、そして投げる仕草をした。


「ナイス」


 花記がとったふりをした。


 エアキャッチボールをしているだけで、会話が何となく脳内でお互いに進んでいる。


 花記と僕は、幼馴染なんだなと強く思った。


お読みいただきありがとうございます。

次話から舞花視点です。

愛実やお姉ちゃんと舞花が話します。

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