水色の蝶をみつけた
雨は一応完全に止んで、曇り空も少し明るくなってきた。
僕と舞花は、30分ほど歩いて、植物園と森の周辺に来ていた。
「やはり旅行の時にたくさん歩いたので、これくらいなんともなく感じますね」
「わかる。だよな。これが僕たちの成長か」
「はい。私たちの成長です」
舞花はまだまだいけるという風に歩き出した。
さて、ここからどう探そうか。
僕としては、確かうろ覚えだけど、蝶は決まった通り道みたいなものがあると読んだ気がするので、写真を撮られた場所と全く同じところに行きたい。
舞花も最終的な結論は同じみたいで、写真に写っている風景をよく見て、
「あっちですかね。たぶん」
森へと続く坂の上の方を指さした。
「よし、じゃああっち行こうか」
「はい」
坂道を舞花と僕は登り始めた。
地面は濡れて、やっと少しだけ活躍し始めた太陽の光を反射している。
そうだ。こんな時って、もしかしたら蝶が水を飲んだりしているかも……。
頭上の方をどちらかと言えば探していた僕は、地面にも意識を向けてみた。
でも、どちらにしろ特に見当たらなかった。
蝶以外の生き物もあまり見当たらない。
まだ雨宿りの延長のような状態なのだろうか。
翅が濡れてたら、翅が乾いてから飛び始めるとかあるかもしれない。
もしそうなら、気長に待つことが大事になるのかも。
そう考えながら、僕は舞花と、ゆっくり細い道を進んでいった。
そしてそれからしばらく進んで、道が舗装されていない、砂利道になったところで。
「あ! 先輩 飛んでます!」
「え、うお、いたいた!」
水色の、蝶が飛んでいた。
なかなかすごい速さで進んでいる。
しかしあれは本物だ。まだ全然弱い日光も、ちゃんと反射している。
あのまばゆさだ。圧倒的に目立つ、サンゴ礁に思いっきり光を当てたかのような水色。
幸い道に沿って飛んでいる。
僕と舞花は追いかけた。
舞花の白いブラウスに土が飛んでついたりしないか心配になるくらい、二人で一生懸命走った。
そして、大きめの水たまりが来たところで蝶はぐるぐると円弧を描いて飛び始め、そしてだんだん高度を下げ……止まった。
チャンスだ。水飲みの時間のようだ。
舞花と僕は、もう絆の深いペアのようにうなずき合って、そして、カメラを構えた。
近づく。
まず、一枚。
とりあえず、遠目からの写真は撮れた。
まだ近づける。
よし。
逃げる気配はない。
そして、蝶が翅を思いっきり開いた。
翅の裏の茶色ではなく、表の水色の割合が圧倒的に多くなる。
今だな。一番いい瞬間は。
僕はもう何枚も写真を撮った。
舞花も何枚も撮っていた。
成功した。
やった。
舞花と僕は、もうそれは完璧に、水色の蝶を撮影できたのである。
お読みいただきありがとうございます。
少し天気が悪い日に水色の蝶が見つかったのが気になるところかもしれませんが、本作は最終的にはハッピーエンドです。




