表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
25/110

舞花② お姉ちゃんとの会話

少し時間が戻り、舞花視点です。

 旅行から帰って二日。


 あんまり普段家にいなくて、いる時もそこまで話さないお姉ちゃんに、私は珍しく呼ばれていた。


「どうしたのお姉ちゃん」


「ううん特には。舞花とのおしゃべりもいいなって思ってね」


 ほんとかなあと思ってしまう。


 だって私のことなんかそんな興味ないでしょ。


 そんなふうに思っていた私は、お姉ちゃんの一言で、椅子に座る途中の体勢で硬直してしまった。


「最近、一緒に歩いている子はだれ? あれは彼氏?」


「え、え、いやお友達で……」


「そうなのね、まあお友達ができるのは嬉しいわ、お姉ちゃんとしても」


「うん……」


 私はうつむいた。そっか、見られてしまってたのか。


 別にそんなにやましいことはないんだけど。


 あるとしたら、旅行に二人で行ったくらいで。


 だけど、なんだか私は、びくびくしていた。


「舞花、オーディション受けてみない?」


「え?」


「今度撮影するドラマ、女子校に通う子が主人公の話で、女の子のキャストがたくさん必要だから募集してるの。だから舞花どうかな?」


「えっと……やめとこうかな」


 私が言うと、お姉ちゃんは予想がついてたよと言うように息をはいた。


「ねえ、舞花。もうチャンスはあんまりないと思う。けど、チャンスが全然ないわけじゃないんだよ。私と同じドラマに出ようよ」


 お姉ちゃんは私を真剣にみて、そんなふうに言う。


「お母さんとお父さんは舞花が今のままでもなんも言わないけどさ、それは、舞花のことを割とどうでもいいと思ってるからだよ。私は違う。私は、舞花のことどうでもいいなんて思ってない。舞花は絶対、演技のポテンシャルだってあると思うし。だから舞花、今のままじゃ、やっぱりもったいないよ」


「……」


 何もいい返せなかった。


 だってお姉ちゃんの論理に、隙はないから。


 お姉ちゃんに比べて明らかに何もできていない私が、反論するところなんてない。


「オーディション、まだ申し込み締め切りまであるから。いつでも言って」


「う、うん……」


 私はうなずいて、そしてコップを持って、自分の部屋にとろとろと向かった。


 自分の部屋に入ると、私はコップに入ったお茶を一気飲みした。


 はあ。


 私の部屋って、なんか寂しい。


 先輩と蝶を探す日々は楽しいし、水色の蝶は見つけたいけど。


 それはそれとして、私自身のこれからの話。


 私は、どういうことがしたいんだろう。

 

 私は、何を目指しているんだろう。


 それが全然、自分でもわからないなあ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] お姉ちゃん悪気ないのかもしれんけど重いなぁ 舞花にとってコンプレックスの塊みたいなもんだしなぁ そもそも両親が姉に付きっきりで、役者への道が苦しくて、姉との差が辛く感じたのが挫折の始まりで…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ