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水色の蝶の方向と、くもり空

 二人で旅行に行ってから、三日ほど過ぎた。


 

 旅行の二日目は、あれからも楽しんだ。


 お昼には信州そばを食べて、それから松本駅周辺をぶらぶらしてから特急あずさで新宿へ。


 そして新宿で舞花の洋服を一緒に買った。


 まあファッションセンスがないので僕の貢献度はゼロだったんだけど。



 

 というわけでそんな楽しかった旅行も過ぎ去り、体育大会の代休も完全に消化し、そして今日はごく普通の放課後だった。


「先輩ー」


「おお、舞花。おっ、あれそれは、新宿で買ったやつ……」


「そうです!」


 舞花が新宿で選んだ白いブラウスは、梅雨に入り始めた中での唯一の晴れ間のように見えた。


 実際今梅雨なので、今日も曇り空の小雨。


 旅行では晴れててほんとによかった。


「あ、で、そうでした先輩、水色の蝶っぽい写真が上がってました」


「え? 僕が撮った写真とはまた別ってことだよね?」


「そうです。ボケてるし小さいし、あんまり拡散されてませんけど」


 舞花がスマホを見せてくれた。


 その写真は、五人くらいしか反応している人がいないが、確かに水色の蝶が映っていた。


「これ、どこだろう?」


「私もそう思ったので聞いてみたら教えてくれました。この街の端の方の、森とか植物園とかがある方みたいです」


 なるほどそっち方面か……。


 ふと思い出した。僕がこの前見た水色の蝶がやってきた方向。


 その方向とも一致している。


「よし、じゃあ今日はそっち行ってみるか」


「はい」


 こうして舞花と僕は、街の端の、森と植物園を目指して歩き始めた。


 今日はいつもよりも口数が少ない。


 やっぱりまだ旅行の疲れが残っているのだろうか。


 いや、そんなに関係がない気がする。


 じゃあ無理に会話を作らなくてもぎこちなくならないような間柄に、舞花と僕がなったから?


 それもある気がするけど、それ以上に、舞花がやっぱり考え込んでいるように見えた。


「舞花……なんか悩みとかない?」


「いや大丈夫……なんですけど、ちょっと、考えてるだけです」


「それは……」


「私、お姉ちゃんに昨日言われたんです。久々にオーディション、受けてみない? って」


「そうなのか……」


「だからちょっと、考えてただけです、オーディションは受けないですけど、まあお姉ちゃんと色々話したりして」


「なるほど」


 どんな話をしてたんだろう? 


 そこまで僕が突っ込むことではないかな。


 僕は心の中でうなずいて、空を見上げた。


 やっぱり天気があんまり良くない。


 たとえ水色の蝶が現れても、今日はそんなに輝いてはいなさそうだ。


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