お城の上から、アイスクリーム
忍者と記念撮影をしてもらった後、松本城の入り口に向かった。
松本城の中に入ると、展示室になっていた。
昔の書類みたいなものや、武器が展示されている。
それらを眺めながら、最上階へといけるようになっているみたいだ。
「先輩、ほらここに穴が空いてるんですね」
「ほんとだ」
窓際の床に穴が空いていた。
といってもいま開けっ放しだと落ちたら大変だから、透明な板がはってあるけど。
「石を落として敵が入ってこないようにしていたみたいですね」
「なるほどなあ」
感心しつつ上の階へと上がる。
やがて最上階までやってきた。
「結構眺めいいです!」
「こうしてみると堀もでかいな」
堀の周りを人がたくさん歩いている。
そしてなんか行列があると思ったらアイスクリーム屋だった。
今日は結構気温が高いからな。
「先輩……」
「アイスクリーム、美味しそうだな」
「え、わかるんですか? 私がそう思ってるって」
「わかっちゃった」
「や、やっぱり私のこと結構食いしん坊だと思ってるんだ、先輩」
「いや、まあ目線の先だよ」
「ああ、確かにアイスクリーム屋さん見てました」
舞花は納得し、そもそも僕がどうして舞花の目を見ていたかは気にしていないみたいだった。
まあどうしてかって言われても、無意識なんだけどね。
僕はまた外を眺めた。
お堀で鯉か何かの魚が跳ねて、そして水しぶきが上からでも見えた。
それを橋の上から眺める子どもたち。
そして左に視線を移すと、アイスクリーム屋さんとはまた別の人だかりを発見。
なんか着物を着た人がいる。
そこから少し距離をとって、結構な人がいる。
ノリがいい忍者の仲間だろうか。
いや、よく見ると、ものすごそうなカメラなどの撮影機材を持っている人がいる。
あれ、何かの撮影かも。
「舞花、あそこらへんなんか撮影してる」
「あっ、ほんとですね……って、あ」
「なんか気づいた?」
「はい」
舞花は少し硬めにうなずくと、言った。
「あそこにいるの、お姉ちゃんっぽいです」
「まじ?」
道理で人が集まってしまってるわけだ。
というか……あのピンク色の着物を着た人が、舞花のお姉ちゃん、菜々なのか。いやあんまりよく見えないけどね。
名前は有名だしもちろん知っているんだけど、顔とかはテレビにいたかもなーくらいなのだ。
しかし僕があんまりテレビを見たりしないからそうなだけで、多くの人は、顔も含めて知っているのだろう。




