自由な星空を、二人で
外は実際少し寒かったけど、舞花にあっためてもらう必要があるほどではなかった。
というかそれよりも、本当に星が綺麗だった。
「先輩、ここに大の字になりましょう!」
ちょっとしたテラスみたいなところに舞花と僕はいる。
あんまり汚れなさそうだし、そうするのが一番星をよく見られそうだ。
だから二人並んで寝そべった。
結局大の字にはなってない。
そのかわり、とても舞花との距離が近かった。
「先輩、なんか星座とかわかりますか?」
「あんまりわかんないなあ」
「そうですか、じゃあ私の出番です」
「星座わかるの?」
「はい、お勉強しました。小惑星を探すアニメを見てから星に興味が湧いたので」
「ああ、なるほど」
舞花はまず空全体を見渡して、そして指をさした。
「まず、月があります」
舞花がちょっと得意げに言うので、僕はとても大きくうなずいてしまった。
「そうだな、なんかまばゆいな」
「はい」
南西に見える上弦の月を眺めながら、舞花と僕はそんな会話をした。
「それで今度はそのまま上を見て……ほぼ真上に、たぶんおおぐま座があるはずです」
「ええと、どこの星を結ぶとできるの?」
「はい、たぶんあそことあそこと……あれ?」
舞花もわかんなくなってしまったようだ。
「すみません、にわかでした、お勉強不足でした……」
「いやいや、なんか見つけたら教えてくれれば、それでありがたいから」
「はい」
僕は宇宙一大きな半球を、ざっと眺めてみた。
南東の方に明るい星を発見。
そして舞花も同じ方向を見ていた。
「あれはわかります。うしかい座のアークトゥルスです」
「おお、めっちゃかっこいい名前だな」
「たしかにです」
「他には……たくさんあるからよくわかんないな」
「ほんと、たくさんです」
「でも、その代わりなんでもありな世界ではあるな」
「え?」
僕はそこらの星を頭の中でてきとうに結ぶ。
ゴールも特に決めてない、迷路のように。
それをしたから何かが起こるわけではないけど。
とにかくそれだけ星々を自由に結べるってこと。
今感じているのは、舞花と僕は、圧倒的に自由な空間に接しているということだ。
てきとうに寝そべっても、星を勝手に結んでも。
そんな特に目的意識がないことをしたって、隣で笑ってくれている人がいる。
それが、とても、素敵だと思った。




