部室
「いやー、バーベキューとキャンプ楽しかったね!」
「うんうん」
バーベキューに行った日から二日ほど経って、僕たちがいるのはまた、夏休みの学校だ。
「他になんかまた計画たてたいね。どこか二人で行きたい」
「そうだな」
僕は考える。目の前の舞花も考える。
花記と部長は、「写真部の活動は別にまたやるから、二人でいちゃいちゃできるデートに行っておいでよ」と言って、自分たちも、いちゃいちゃなデートの計画をたてている。
デートと言えば、夏祭りとかあるあるだけど、なんか僕たちの地域の夏祭りは、小学生が珍しいカードを手に入れるための儀式みたいな感じで、デートって感じではない。
やっぱり撮りたくなる写真も、ごみごみしてて撮りにくそうだ。
花火も上がらない。
だからなあ、なんかいい案ないかなあ。
お嬢様舞花は家族旅行も結構行くのだ。
舞花と出かけられる時に出かけたい。
うーん、なんか思いつけ! 思いつかないなあ。
頭だけで考えてもあれなので、てきとうに検索しまくる。
そしてできた計画が……。
「真面目すぎる……」
と舞花に言われてしまった。
「そもそもなんでデートと夏休みの課題を合体させようとしたの?」
「え、舞花もあるでしょ。博物館行く課題」
「あるけど、めっちゃででんとあるけどね」
それでも、博物館というのはデートの場所ではなく、お勉強をする場所なようだ。
いやまあそうな気もするけどね。
涼しい割には楽しいと思うけどなあ。
「うーん。でも課題を秀映と楽しく済ませちゃいたい感もある」
「でしょ」
「きめた。じゃあ秀映の真面目計画採用!」
「やった」
で、喜んでる僕の膝に舞花が座ってきた。
「どうした?」
「いや、ちょっと秀映の計画が真面目すぎて愛が足りないので、私の方から愛を受け取りに来た」
「そうかよ」
「うん」
舞花はスマホの縦書きメモ帳を開き、僕に軽く寄りかかりながら、小説を書き始める。
たしかに、舞花のこと好きすぎるのに、なんかそれをあんまりデートの計画に反映できてないな。
そこんところは申し訳なさすぎた。
だから僕は、舞花を少しだけ抱きしめようと思ったけど、そしたら小説を書く邪魔をするだけになってしまう。
うーん。
仕方ないので、肩を揉んであげた。
「⁈ 肩揉んでくれてる。どうして?」
「まあ……愛を伝えようと」
「そうなの? それ小学生がお母さんの日にやるやつじゃない? たしかにそれはそれで愛を伝えてるけど」
「たしかに」
「でもまあ、きもちいから、ありがと」
舞花はそう言いながら、小説を書く指を止めて、振り返って笑った。




