お話
「なんかね、星の図鑑で見たんだけどね。北極星っていうのは、全然動かないんだよ」
「そうなんだ。よく知ってるね」
「ほめられた」
女の子は私の隣で少し笑って、そのままきっと見つけたんであろう北極星を見つめて言った。
「私ね、お母さんに怒られまくってるんだ、最近」
「そうなの?」
「うん。この前、おつかいしてたでしょ」
「してたね」
「あの時も買い忘れたものいっぱいあって怒られた」
「えー、でもおつかいしてるだけで偉いよ。私小学生の時そんなにおつかいしなかったし」
「うん……でもね、お母さんがね、私は何をやっても大したことないって。あのリスさんの工作もね、川に落としちゃったからどうしようって私は思ったのに、お母さんがね、あんな大したことないの、落としちゃったんだったらもうほっときなさいって」
「……私もね、昔からそんなこと言われたなあ。まあ今もお母さん、私のことそう思ってるかもしれないけど」
「え、ほんと? おんなじこと言われたの?」
「言われた」
私はそう返しながら、だからちょっと懐かしかったのかな、と思った。
それから沈黙がちょっと続き。
私は頭の中でお話を組み立てた。
なんかいい案が思いついたかも。
せっかくだし、隣の女の子に聞いてもらおうかな。
「ねえ、今私が作ったお話、聞いてもらってもいい?」
「お話? うん、暇だし、面白そうだから、聞くよ」
☆ ○ ☆
あるところに、ひとりぼっちで暮らしている、リスがいました。
そのリスは、女の子に出会いました。
女の子は遠くで遊びたくて、一人で飛び出してきてしまったのです。
リスは初めて誰かと遊びました。
大きな木の穴を案内したり、綺麗な魚の見える川に連れて行ったりしたり、美味しいどんぐりがたくさんあるところを教えたりと、自分の住む場所のありったけを紹介しました。
でも、もう暗くなりました。
女の子は「そろそろ帰らなきゃ。でも帰りたくないなあ」、と言いました。
リスはどうして? って思ったけど、その後、もしかして、女の子もひとりぼっちなのかなと思いました。
でも訊いてみると、女の子には、お友達も、家族もいました。
「なんで帰りたくないの?」
尋ねると、女の子は
「みーんなとけんかしまくっちゃった」
と言いました。
けんかってどんな感じなんだろ?
リスは喧嘩をしたことがありません。
ひとりぼっちだったので、誰かに怒られたことも、馬鹿にされたこともなかったのです。
だから好奇心旺盛なリスは言いました。
「私もけんか、やってみたい」
こうしてリスはけんかをしに、女の子について行くことになりました。




