舞花 真北の星
私は草の擦れ合う音かなにかで目覚めた。
真っ暗だった。
そっか、秀映と星を見てて、そのまま寝て、だけどまだそんなに時間は経ってないのかな。
そんな気がした。
少しお手洗いに行きたかったので、懐中電灯を持って、外に出てみる。
お手洗いとかがある建物はすぐそこなので、そんな怖くはない……けど、ここまで暗い外を一人で歩くのは初めてなので、ちょっと慎重な歩き方だった。
お手洗いはぼんやりと光っていて、だからすぐに真っ暗ではないなと思えた。
LEDの光だからか、そこまで大きい虫が集まってなくて、ほっとして、お手洗いに入った。
お手洗いを済ませて、また外に出ると、小さな人が座っていた。
え。
誰もいない前提だったので、ほんとにびっくりして、でも音を立てずにただ驚いた。
もし、お手洗い行く前に遭遇してたら、も、もらしちゃってたかもしれない……。
でも、よく見たら、知ってる人影だった。
そう、買い物の時にも会って、昨日、秀映が引き上げた工作を渡した、小学生の女の子だった。
「……こんばんは」
挨拶をしてみると、
「うわ! あ、あ、昨日もあった、お姉さんか」
女の子も結構驚いてしまった。
そりゃあそうか。
「ごめんなさい、お手洗い行ってたら通りがかったの」
「なるほど」
「ここで、何してるの?」
「大きな自然と、しゃべってた」
女の子は、そんなふうに言う。
「……どんなことを話してたの?」
私は訊いてみた。
ちょっと懐かしいなって思いながら。
「特に大したことないこと」
「そっか」
私はうなずいて隣に座った。
地球では、この場所にしか灯がないみたいだ。
それくらい、周りの森は暗かった。
夜だけど少しだけセミの声がする。
「星座って、知ってる?」
女の子が空をじっくりと見ながら訊いてきた。
「ちょっとなら」
「私もちょっとなら」
女の子は首を回転させてさらに空を眺め、
「北ってどっちだろう」
とつぶやいた。
私はスマホを開いて、方位磁針アプリを起動した。
そして北の方を確かめる。
「あっちだよ。ちょうど私たちが見てる方」
「そうなんだ。教えてくれてありがと」
女の子は真北をじっと眺めた。
動かない北極星を探しているのかな。
確か探し方は北斗七星をまず探して……。
そうして、私も女の子と一緒に、真北を見つめていた。




