二人でテントの中
「秀映釣りうますぎじゃない?」
「これは、釣りが上手いっていうのとはあんまり関係ないかもだけどな」
でも確かに、野球をしてた頃、夏の合宿で釣りをしたりしてたので、釣竿の扱いにはなれている。
というわけで僕が何をしたのかというと、針を引っ掛けて、小学生の工作みたいなのを釣り上げた。
全体は、リスのような形をしている。
材料は、身近な空き箱を組み合わせて、茶色で塗ったような感じだ。
さて、これは誰がここに沈めたんだろうか。
普通に考えれば、この作品を持ったまま遊んでいた子供が、川の中に落としてしまったのだろう。
まあとりあえず、その持ち主が取りに来るかもしれないし、置いとくか。
そう思っていると、
「あ、それ私の!」
どこからか幼い、そしてなぜか聞いたことのある声が聞こえて。
そして見てみれば、JSがいた。
そう、あの一昨日、おつかいを頑張っていたJSだった。
「本当にありがとね!」
JSは家族と、友達の家族とバーベキューに来ているらしい。
かなり偶然なことだな。
JSは、リスの工作を抱えて、向こうで賑わっている集団へと戻って行った。
ところで言ってなかったかもしれないが、今日はこのままお泊まりキャンプである。
いや初めはそのつもりはなかったんだけど、あまりにもキャンプ設備が至れり尽くせりなので、もうせっかくだしということで。
もう用意されているテントに寝袋で寝るだけという素晴らしい状態だ。
さて、暗くなったら……
「よし、星の写真取りに行くか」
「行く!」
部長と花記はそう言ってテントにもほぼ入らずに出かけようとするけど、舞花は、
「大きい系の虫が突然飛んでくるのが怖いので、ここで写真整理します……」
まあ僕も疲れたから、舞花と一緒にいようかな。
というわけで、舞花と僕だけテントに残った。
さて。
多分今日の舞花の写真整理は、ただの写真整理じゃないからな。
舞花は一度のイベントでたくさん写真を撮ったら、必ず、ひとつの物語に沿って写真を選ぶ。
そういう写真の作品群を作るのが、最近の舞花のオリジナリティの作り方なのだ。
「まずはどんな話にするかだよねえ。主人公は魚で、頑張って上流を目指すとか? はありがちな気もするね〜」
そんなことを呟きながら、写真を、新たな世界を断片的にのぞけるようなものにしていく。
見てる人に想像の余地はあるけど、でも全く方向性がわからないわけではない。
そんな加減が難しいから、なかなか悩ましい。
舞花と僕は熱心に、普段寝る時間すぎまで、話し合っていた。




