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気が早いわねえ in 家


「 お前、その人とはもう、あの、ほら、そんな感じになってんのか?」 

言いよどむおっさんが気持ち悪い。

「 はっきり言えよ。なってないよ。高校生だからって男の候補にも入れてもらえねえよ」 

途端に親父がほっとした顔をした。

「 そうだろうな。良し、落とせるにしろ落とせないにしろゆっくりやれ。いや違うな、そう言う問題じゃねえな。落とせない方が良いのか。そして次はもうちょっと年が近い子にしろ」

こっちは真剣なのに、軽い調子で次の話をする親父がムカついた。

「 何でだよ。どんな人か知りもしないくせに、年だけで反対すんのかよ。見損なったよ」

親父が口をあんぐりと開けて愕然とした。

「 俺が親父に言ったことそのまんま言ってやがる。遺伝子ってすげえな・・・」 

「 何?じいちゃんに?あーもしかして父ちゃんと母ちゃん年離れてんの?」

親父がもう一度愕然とした。


「 お前、本気で言ってるのかそれ。俺の息子が2桁の引き算出来ないやつだったなんて。悪かった涼、気付いてやれなくて。かーさーん!大変だ!涼が頭悪いぞ!」

リビングと続いているキッチンで洗い物をしていた母ちゃんが、水を止めてこっちに来た。

「 そうなの?良くもないけど悪くもないでしょ?頭打ったの?」

親二人の温度差が激しい。

「 違うよ。引き算は出来る。年知らねえだけだし」 

「 はあ!?毎年でかいケーキ食ってるだろ!?」 

親父が煩い。

「 毎年誕生日が来てんのは知ってるよ。あんな大量のロウソク数えられるわけねえだろ」 

「 お前、自分のルーツに興味なさすぎだろ」

呆れた口調の親父に母ちゃんが割り込んできた。

「 で、なんの話し合いしてんの?引き算大会してたんじゃないんでしょ?」

親父が自分の年を息子が知らなかったことについてまだ言いつのるつもりだと分かっているので、それより早く口を開いた。


「 俺が年上の子持ち人妻とやって良いかどうか」 

母ちゃんが絶句し、親父が吠えた。

「 お前そんなこと言ってなかったぞ!年上だって言っただけだろ!?人妻が良い訳有るか、ど阿呆!!」

親父の剣幕を眺めながら、自分が何を言ったかに気付いた。

「 あ、間違えた。人妻じゃなかった、子持ちなだけの大人」

「 それでも聞いてねえ!子持ちとは聞いてねえ!」 

「 うるせえなあ、だから、会ってもねえのに子持ちだからってだけで反対すんのかよ。可愛いんだぞ太朗」

二人が目を見開いた。

「 あんた、もう子供と仲良いの?」 

「 え?ああ、うん。小さい時に父ちゃんによく飛行機やってもらったろ?あれやってやったらきゃーきゃー言ってめちゃくちゃ興奮して可愛いんだ。父親が腰悪くてやってもらったことないんだと勘違いしてたんだけど、父親いなかったんだよなあ。そりゃ肩車も興奮するはずだよな」 

太朗の興奮を思い出してしみじみ言うと、ふたりがクールダウンした。

「 お子さんが小さいうちに離婚なさったの?」 

母ちゃんが親父の後ろのソファに腰掛けながら俺に尋ねた。

「 いや、結婚してねえんだって。婚約者に妊娠してから振られたって言ってた」 

「 なんだそりゃ!?最悪だなその男」 

「 だよな。俺もクソだと思う」 

「 クソね。良かったわよそんな男と結婚しないで。で、もうあんたたちお付き合いしてるの?」 

今度は俺より早くに、にやついた親父が口を開いた。

「 相手にされてねえんだってよ。なのにこいつ、高校生が大人とやるのが犯罪なのか気にしてんだぜ」 

「 気が早いわねえ。まさか無理矢理やるつもりじゃないでしょうね。そんなこと考えてんなら改心するまで全裸で屋根から逆さに吊るすからね」 

「 そんなつもりねえ」 し、これから思うとしても全裸逆さ吊りの刑が怖くて出来ねえ。

「 まあ、それなら勝手に好きでいる分には問題ないんじゃないの?相手の方に迷惑かけない程度にお子さんと仲良くしてあげなさい。あ、もしかして、母親に嫌がられてるんじゃないでしょうね?それは駄目よ」 

「 あ?それは駄目だぞ。嫌がられてるのにしつこく近づく奴はストーカーだぞ。それこそ犯罪だからな」

ふたりして俺をストーカー扱いかよ。

「 嫌がられてはないよ。それは確か。たぶん俺が高校生で生活力がないのが問題なんだろ」

一瞬止まった親父が、大きく頷いた。

「 確かに大問題だな。子持ちだし尚更だな」 

「 そうねえ。誰か良いお見合い相手探してきてあげようかしら。ねえ今度うちにその親子連れて来なさいよ。お子さんいくつなの?」 

なんか聞き捨てならねえ台詞がはさまったぞ。

「 俺が好きな人だって言ってるだろ。なんで母ちゃんが他の男紹介するんだよ。そんなことするなら一生連れてこねえ」 

ふたりが俺を微妙な目で見ていた。

「 早く大人になれればいいけどねえ。そのママに良い人が出来るまでに間に合うかしら」

「 どうだかな」   



結局、俺と彼女が肉体関係を持った場合、親がどうするのか答えを聞くのを忘れた。

まあ、あの様子なら大丈夫だろ。

とり合えず合意があれば、彼女は犯罪者にならず、母ちゃんの制裁を俺が受けるぐらいですむだろう。制裁の内容が、逆さ吊りじゃなくて拳骨ぐらいであることを祈ろう。

問題は俺に生活力がないってことだ。それがなきゃ受け入れてもらえない気がする。年齢は月日が経たないことにはどうにもならないし、その差はいつまで経っても縮まらないが、経済力の方に可能性を見せるのはどうだろう。

俺が金持ちになりそうな予感がすれば、大人になるまでキープしとこうかなって気にはなってくれるんじゃないか?

まずは勉強だな。そして、大学入ってもっと勉強して、大企業に入るか起業するかして金持ちになるんだ。

他のとこは大丈夫なはずだ。優しくてイケメンで良い身体って言ってたからな。キスしても嫌がらなかったし。むしろめちゃくちゃ気持ち良さそうな顔をして、これ以上は我慢できなくなるから駄目だって・・・。

取り敢えず悶々として、勉強はしばらく出来そうになかった。

明日から頑張ろう。 







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