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きったねえ! in McD


「 はあ?それで一緒に帰ってんのか?」 

朝っぱらから電話して来た政木に暇なら遊ぼうぜと誘われ、昼までの部活を終えた後マックに来ていた。


「 なんか2日おきくらいで送ってもらってる」 

政木はでかいコーラを飲みながら呆れた顔をした。

「 お前なあ。略奪しねえとか言っときながら、何か思い切り不倫めいてきてるぞ」 

不倫と言う台詞に、口の中のスプライトを思いっきり噴いた。

「 きったねえ!」 

政木が今更自分のポテトを守りながら文句を言った。

「 お前が変なこと言うからだろ!」良かったコーヒーじゃなくて。 

部活用のバッグから引っ張り出した濡れたタオルで、白いシャツにかかった部分を拭いながら言い返すと、政木が眉を寄せた。

「 変なことって。お前思わねえの?」 

しばらく口を噤んでいたが、確かに自分でも今の状況は変なんじゃないかと感じている。

「 まあな、でも考えないようにしてる。だって太朗も一緒なんだし、実際違うだろ」 

でも、この状況を旦那は知ってるのかなとは思う。そして、知ったらどう思うんだろうなとも。

「 ふうん、違うのか。まあそれはお前らにしか分かんねえよな。旦那からどう見えるかはともかく」

そうなんだよな。


「 迷惑かける前に止めた方がいいのかな」 

勘違いした旦那が逆上するかもしれないな。

「 お前が迷惑かけるわけじゃねえだろ。話し聞く限り、どれもあっちが誘ってんだろ。お前実は狙われてんじゃねえの?」 

耳を疑った。

「 はあ?誘ってるって?小運動会と虫取りと飛行機がかよ?そんなら夜に太朗なしで誘って欲しいよ。しかも小運動会はおばちゃんで、飛行機は太朗に誘われたんだよ」

政木に言いながら現状を再確認してがっかりした。夜に彼女に誘われることはなさそうだな。 

「 ならあっちがその気ってことはなさそうだな。それにしても一緒に帰るとか、無頓着すぎだろその女。お前が子供だからって本人は気にしてねえのかも知れねえけどよ、旦那にとっちゃ高校生は男だろ。旦那にばれて迷惑かけられるのお前だぞ」 

彼女を悪く言っているのでムカつくが、やっぱり政木は斉藤の言うように俺の心配をしてくれているだけらしい。

「 どうかな。旦那にも俺のこと話してるのかもしれないし。太朗に大きい友達が出来た、みたいな感じでさ」

テーブルに両肘をついて項垂れた。 

「 自分で言っといてへこむなよ。旦那がお前の事気にしないなんて有り得ねえだろ。俺なら絶対に自分の嫁に高校生との逢引は許さねえぞ」

俺だって許さないけど、俺らが思ってるより、俺らは子供だと思われてんだよ。

「 旦那が高校生ならそうだろうな」 

「 お前なあ、もう勝手にしろ。子供の友達やってろ」

ああ勝手にするよ。色々考えても結局会いたくなるんだよ。


「 お前は何やってんだよ。部活もバイトもやってなくて暇じゃないのか?」

ふと政木のことが気になって尋ねた。

政木がポテトを何本もいっぺんに口に入れながら首を振った。

「 全然暇じゃねえ。合宿してるし」 

「 は?部活も入ってねえのに?どこで」 

「 家」 

「 何言ってんだお前」 

政木が嫌そうな顔で溜息を吐いた。

「 うち道場なんだよ。夏は合宿っつって代わる代わる泊りで人が来てよお。なんでか俺も一緒に合宿なんだよ。しかも俺だけ休み中延々だぞ」

そりゃ知らなかった。

「 初耳だな。何の道場なんだよ?今日はどうしたんだ?休みか?」 

「 あほか。合宿に休みがあるわけねえだろ。脱走してきたんだよ」 

「 休み中ずっとじゃねえじゃん、脱走してんなら」 

政木がぎゃははと笑った。

「 まあな。たまには生き抜きしねえとな。死んじまうだろ」 

「 ふうん。中々大変だな」

初耳だったが、親父か兄貴かに文句を言いながら汗だくになってしごかれている政木は想像できる気がした。 


「 そうなんだよ。だから癒しに斉藤の番号教えてくれよ」 

「 それは出来ん。直接聞け」 

人の個人情報を勝手に横流しする奴は許せん。俺も絶対教えん。

「 番号も家も知らねえのにどうやって聞くんだよ」 

「 自分で考えろよ」

「 せめて今斉藤に電話して代わってくれよー。なあ、いいだろー?」

テーブルにだらしなく身を伏せて俺を見上げるようにしている政木が気持ち悪い。

まあでもちょっと考えてみた。俺の携帯から直接政木が聞くことにはなるか。

嫌なら斎藤の事だから断るだろうしな。

携帯を出して斉藤を呼び出した。割とすぐに斉藤が出た。

「 どうしたの?」 

「 ああ、政木がお前と話したいってさ、悪いな。ほら」

目を輝かせている政木に携帯を渡す。めちゃくちゃ喜んでる。やっぱり気持ち悪い。どれだけ斉藤に癒しを求めてるんだよ。斉藤も迷惑極まりないだろ。


「 さいとーう。久しぶり!なあなあ、夏休みちょっとは遊ぼうぜー。将棋部いつやってんだよ。スケジュール教えてくれよー俺も出てえよー」 

斉藤が電話の向こうで鬱陶しがってるのは目に見えてるけど、将棋を出されたら斉藤も長くは持つまい。

結局政木は、斉藤のアドレスと将棋部のスケジュールを手に入れてご満悦だった。ごめん斉藤。











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