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重大なミス

「そうしてブライアン君に直接会ってみたら、やっぱり。私の予想は大当たりだったの。」


原因が分かって良かったわ。

ちゃんと、もう二度とこんな事が無いようにしておくから。

今度からは、ちゃんと許可を取ることを忘れちゃ駄目よ。



良かった良かったと喜び、ディアナは安堵の息をつく。


「姉さん、原因が分かったことはいいことだとは思うよ?」

浮かれ気分なディアナに、ムウロが低く搾り出すような言葉をかけた。

「だけど、鍵穴を盗まれたっていう件は、なんの解決もしてないんだからね!」

どうするのだ、とムウロが吠える。

「"恐ろしい事"が何なのかはまだ分からないけど、それが起こってもしもの事になったら…」

人間がどうなろうと知ったことではない。シエルは優しい人だと思っているムウロだが、それはシエルだからの感想なのだ。ムウロにとって庇護対象であるシエルだからであり、庇護対象以外の存在がどうなろうと知ったことではない、というのがムウロの考えだ。それでも、魔族の中では優しい性質な方だと言える。

ムウロが心配している"もしも"とは、シエルが巻き込まれたらどうしてくれる、というものだ。

ディアナや『魔女大公』に似ている、と思っているのはムウロだけではない。そんなシエルなら、『魔女大公』から始まり、ディアナも関わった、シエル自身も関わってしまったその事態に、巻き込まれないという可能性の方が低い。ムウロはそう思うのだ。


「……あら…もしかして…言っていない?」


やだ、とディアナは頬を染めた。

そして、ゴメンなさい、ゴメンなさい、と謝った。


「私、言ってなかった?」


カルロとレイを振り返り、確認を取ったディアナ。すると、カルロとレイも「あぁそういえば」とディアナの確認を肯定して頷いた。


「あのね。盗まれたのは本当に大変なことで、申し訳ないと思っているわ。でも、その心配に対しては本当に大丈夫よ。これは、絶対に自信を持って宣言するわ。」

「神聖皇帝の名において、私もそれを宣言する。」

ディアナの胸を張った宣言に、カルロも言葉を添えた。


「例え、姫姉様の鍵を持っていたとしても、鍵穴を回すことは出来ないようにしてあるの。勇者の力、姫姉様の力、魔王様の力…私の中にある様々な方々の力を使って、幾重にも封印を仕掛けてあるから、決して解けるものではないと、自信を持って言えるわ。」

「勇者の力、という部分には私も助力を入れたので。」


母子の力強い宣言に、それなら、とムウロも引き下がる。

ディアナが体調を崩していたのは、それにも原因があった。そう、カルロは説明を付け加えた。箱庭を作り直す為に全力を尽くした上に、自身の中のバランスを崩すのを覚悟の上で、多くの有力者達から取り込んでいた力を各々に引き出して、鍵穴を宿した幾つもの物へと守りを施していった。

それは、ディアナに大きな負担を強いるものだったが、カルロの反対も押し切って行われた。

それが易々と崩される筈はない。

そう自信を持って、カルロも宣言する。


「……で、どうして盗まれるようなことになったのさ?」


「……簡単にいうと…許可を出しっぱなしにしちゃったみたい。」

てへっ、と首を傾げて、苦笑いで場を濁そうとディアナは企んだ。

「それ、うっかりで済む話?」

だが、ムウロはそれを許さない。

「ディアナちゃん…」

自分もうっかりしたところがあると分かっているシエルも、唖然とした面持ちになる。


「ブライアン君の場合、シャラちゃんを招いた時の許可がそのまま継続していて、その『目』に反応してしまったようなの。…つまり、盗んだ人も以前に招いた事のある人物、あるいはそれに関わる何かを所有している人物ということになるわね。」


弟と友人の目から逃れるように、ディアナは考え込むフリをして背中を向けた。

誰かしら、と悩むフリをしながら、内心では必死になった自身の箱庭の在り様に干渉し、修正していく。

もう誰も、ディアナの意思に反した存在が入ってこれないように。

ちゃんと、その存在の欠片を持っていようと何だろうと、入ってこれないように厳重に造り替えた。


でも、本当に誰なのだろうか。


この箱庭に招いたことのある人物など、本当に限られるのだ。

限られるからこそ、悩みは増える。

その誰しもに、『魔女大公』の遺物を求める理由があった。その理由は様々でも、求める思いの強さにさほど違いはないと思われた。

でも、その誰もにも、今回の件は当て嵌まらないと、ディアナは思うのだ。思っていますからこそ、犯人が分からなくなる。



「…レテオさんは、大丈夫かな?」


「ん?どうしたの?」

「レテオ…何処かで聞いたような…」


『魔女大公』の鍵穴が盗まれた。なら、シエルがドワーフのレテオに修復の為に預けた、『魔女大公』の日記は大丈夫だろうか。その小さな呟きは、しっかりとムウロにもディアナにも聞こえていた。


「あのね…。」

シエルは、くっついてしまっているページがあって、それをはがしてもらう為の修復を頼んだ、ドワーフ族の職人の話を口にした。


「まぁ…。姫姉様らしいわ。…そうね。危険は、あるわね。」

盗まれる危険は大いにある、とディアナは言う。ムウロもそれに同意を示し、この後にでもドワーフの村に行こうか、と提案した。

「うん。ムウさん、お願いします。」

心配する様子を隠すことなく、シエルはその提案に頷いた。



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