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バトルフロンティア  作者: ぞえ
激動編
34/35

第七話 偽りの魔王と異世界の勇者




 槍を持ち、一直線に歩き出す。左手の痛みも感じない。右足も元通り。魔力も回復し、何も不服はない。

 俺はこんな状況にも関わらず、笑っていた。

 少し、ふふっと笑いながらグレイスを見た。グレイスも傷口が治ったのか、立ち上がりこちらを見る。が、何処かそこには余裕のないような感じがする。


「お前は・・・どうしてそこまで俺の前に立ち塞がる?何をお前が突き動かす?一体お前は何なんだ?」


 いつかの出来事のように、俺は笑い、奴に言った。


「俺か?俺はな・・・・」


 世界が滅びに向かった時、突如現れる謎の異世界人。どんな困難も立ち向かうことを忘れない、人々の希望の星。

 裏切られても、報われなくても、惨めでも・・・進む事しかしない。きっと、人々はこいつのことをこういうんだと思う。








「俺は・・・・・勇者だ」












「そうか・・・・」


 グレイスはそっと剣を構えた。

 俺と奴、双方どちらかの最期の時が来た。

 この一撃に・・・全てを賭ける。そして、この戦争を終わらせる。


「『ジェノサイドダークネス』」

 

 漆黒の剣が黒い光を増加させる。

 

「死ねぇぇぇぇぇ勇者ぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 奴の鋭い一撃が俺に迫って来た。

 俺はそっと目を閉じる。

 この命に代えてでも、この世界の人全てに恩返しをする。

 それが俺に課せられた義務である。


「『氷魔斬鉄槍』」


 氷の一撃が奴の腹部を貫いた。

 一瞬だった。


「・・・・・・な・・・・・・ぜ・・」


 グレイスはその場に血を流して倒れた。


「・・・・はは、これで・・・これでいいんだ」


 視界が揺れ、その場に倒れる。

 胸に一撃、受けていた。


「ユウト!」


 と、サクヤが駆け付けて来た。


「・・・・悪い・・・・」

「ユウト!ユウト!」


 涙を流しながら俺にしがみつく。

 

「・・・・・サクヤ」

「ユウトッ!」


 お別れだ。


「いやっ!死なないで!」

「自分のことは一番俺が分かってる・・・だから、最後に一つだけ・・・・」


 血が流れる。

 ドクドクと、止まる気配はない。


「これが今世の別れだ・・・サクヤ・・・ありがとう」

「ダメ・・・ユウト!ユウトがいなくなったら・・・私・・・」


 俺は最後の力を振り絞って言った。

 最愛の人への、最初で最後になるであろう言葉。


「サクヤ・・・愛している」


 次の瞬間、俺の体が光り始め、拡散していった。


「え・・・何これ・・・いや・・・いやよ!ユウト!ユウト!」


 消える・・・消えて行く。

 そう、最後に感じたのは・・・そうだな・・・温もり・・。




「・・ありがとう」






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